中国の研究チームが2018年以前に豚から人に新型インフルエンザウイルスが感染していたと報告したのを受け、比農務省は3日までに、養豚業者や住民らに対し、飼育している豚の死亡率が通常より高い場合にはすみやかに農務省関連機関や獣医に相談するよう呼びかけた。
世界中で拡大する新型コロナウイルスに加えて、豚からの新型インフルエンザウイルスも同時に流行する恐れがあり、すでにアフリカ豚熱(ASF)の感染が広がるフィリピンでもその対策を求める声が強まっている。
中国からの報告によると、2011年から18年にかけて実施された調査で養豚場で働く従業員の10・4%が、09年に大流行した新型インフルエンザに由来する豚インフルエンザウイルスに感染しており、一般住民の4・4%も抗体を持っていたという。しかし、まだこの豚起源の新型インフルエンザウイルスによる人から人への感染は確認されていない。
この報告を受け、農務省畜産局は声明を発表し、比が中国から豚や豚肉製品の輸入を禁止していると強調した上で、養豚業者らに飼育施設のバイオセキュリティーについて獣医らに相談するよう勧告した。
また関税庁も1日までに、アフリカ豚熱に感染した豚肉製品などの流入を抑え込むため農務省畜産局の職員らと連携して空港や貨物港での水際検査を強化していると発表した。
3日付英字各紙によると、ダール農務相は2日、ビジネス関係者らに向け中国から豚肉製品を違法に輸入しないよう改めて呼びかけた。
また、同相は畜産局が中心となり畜産関連省庁間会合を開催し、動物と人に感染する感染症の対策に向けたフレームワークを策定し、ドゥテルテ大統領に適切な勧告書を提出するとしている。
今後、人にも感染する豚インフルが業界で拡散する事態になれば、深刻な影響が出るとみられ、政府は対策を急いでいる。
比で養豚業は年商2600億ペソを稼ぎ出す主要な農業部門となっているが、ASFの感染がルソン地方を中心に昨年から各地で拡大。
特に今年2月にミンダナオ地方で2州目となる南ダバオ州でもASF感染が確認され、大統領の肝いりで封じ込めに向けた家畜伝染病対策委員会を立ち上げた。