重力が粒であることを証明できるかもしれないMITの画期的な実験
2025.06.03 18:00:35 TUESDAY
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/178835
>>アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究チームがレーザーを使って約1センチ大の「ねじれ振り子(トーションオシレーター)」を室温からわずか0.01ケルビン上(10ミリケルビン)の極低温まで冷却することに成功しました。
>>電磁気力、弱い力、強い力の3つはすべて量子論でうまく説明されていますが、重力については完全で一貫した量子論(いわゆる「量子重力理論」)が存在せず、重力子(グラビトン)という仮説上の粒子も未発見のままです。
>>研究チームが目を付けた装置が「ねじれ振り子(トーションオシレーター)」と呼ばれるものです。
>>以来、ねじれ振り子は万有引力の法則の検証や重力による微小な効果の探索に古典的な道具として活躍してきました。
>>この振り子は質量を載せても機械的な損失が小さく、すなわち品質係数Qが非常に高く、長時間にわたり微弱な力で揺れ続ける特性があります。
>>研究チームは、この古典的装置を量子の領域へと引き入れることを目指しました。
>>「重力物理学の伝統的手法と、原子・光物理学のレーザー冷却技術という2つの分野を組み合わせることで、古典と量子の橋渡しをしようとしています」と研究者たちは説明します。
>>レーザーを用いた冷却技術は1980年代から原子ガスを極低温に冷やすために確立されており、また2010年前後にはナノサイズの機械振動子の直線運動を冷却する試みも行われてきました。
>>しかしセンチメートル級のねじれ振り子にレーザー冷却技術を適用するのは今回が初めてであり、この新しい「ハイブリッド」実験装置こそが重力を量子論で記述すべきかどうかを検証する全く新しい実験系になると期待されます。
>>研究チームは長さ1センチメートルほどのシリコンナイトライド製薄膜リボンを両端で固定したトーションオシレーター(ねじれ振り子)を製作し、この振り子のわずかな回転運動をレーザー光で計測すると同時に制御することで冷却しました。
>>具体的には振り子に小さな鏡を取り付け、そこにレーザー光を当てて振り子の角度の変化を捉えます。
>>「オプティカルレバー」と呼ばれるこの手法では、鏡がほんの僅かに傾くだけで反射したレーザー光の位置が大きくずれるため、振り子の微小な角度変位を拡大して検出できます。
>>研究者たちは「レーザー光そのものが空気の揺らぎや振動、光学系のわずかな乱れによって微妙にブレてしまうことがあります。これがあたかも鏡(振り子)が動いたかのような誤信号として現れてしまい、真の物理信号の測定を妨げるのです」と説明しています。
>>つまり装置の感度を上げるほど、レーザーの揺らぎによる偽の振動信号(ノイズ)が無視できなくなる問題に直面したのです。
☆>>研究チームはこの課題を解決するために「ミラー付きオプティカルレバー方式」を導入しました。
>>同一レーザーをビームスプリッターで二分し、一方のビームを振り子の鏡に当てて振動を計測しつつ、もう一方をコーナーキューブ反射器で逆向きに戻してレーザー固有の揺らぎだけをキャンセルする仕組みです。
>>2本のビームを検出器上で重ね合わせると、振り子の本当の信号だけが残り、不要な揺らぎ成分は打ち消し合って消えます。
>>圧倒的な低ノイズ化により、研究チームは振り子の微小運動を量子論が規定する「ゼロ点ゆらぎ」よりも約10倍も小さいノイズで検出できるようになりました。
>>この高感度を活かし、研究チームはレーザーの光圧によるフィードバック制御で振り子から熱エネルギーを奪い、室温(約300 K)から10ミリケルビン(0.01 K)という極低温まで冷却することに成功しました。
>>現在の段階で、振り子の運動は量子ゆらぎに迫るほど小さく制御できましたが、それでもなお完全に「量子の最低エネルギー状態(量子基底状態)」に達したわけではありません。
>>言い換えれば、振り子の持つエネルギーを絶対零度に対応する最小限まで取り去りきった状態(ゼロ点振動だけの状態)には、もう一歩及んでいないのです。
>>研究チームは今後、この真の量子基底状態を実現することを目標に掲げています。