いちいち書くのが面倒なので、勝手にコピペする

進化的に安定な性比が1:1だという議論は,もともとR.A.Fisherによってなされたものです。
数式で厳密に表現することもできますが,感覚的に説明すると,次のような仕組みになります。
集団中の雌の数が雄よりも多いときは,雄についても雌についても交尾機会が集団内で一様ならば,
雄が平均して雌よりも多くの子を残すことができるので,雄雌を決定する遺伝子の世代間伝達確率が
その遺伝子自体の存在と独立ならば,その親で働く遺伝子のうち雄を作らせる遺伝子が,より多くの
子孫に伝えられることになります。雄が雌よりも多くなった世代に至って,雌が雄よりも平均して多くの
子を残すことができるので,今度は雌を作らせる遺伝子がより多くの子孫に伝えられることになります。
それゆえ,進化的に安定な唯一の性比は1:1となるわけです。しかし現実には1:1でない場合もあります。
例えばエジプトヤブカのいくつかの集団では,雄の方が雌よりも極端に多くなっています。これは,
Y染色体上にある遺伝子Mが減数分裂のときにX染色体を壊すため,X染色体をもつ精子が劣化して,
Y染色体の方が多く受精に成功するために雄が多くなっていることがわかっています。これだけだと
雌がいなくなって絶滅してしまいますが,Mによって壊されない耐性X染色体が存在するので,
そうはならないということです。この場合は,遺伝子Mが,自らが親世代から子世代に伝えられる確率に
作用するので,前提の一つが崩れています。
自分の腹の中で孵化する子どもを産み,子ども同士が交尾するダニの一種Acarophenaxでは,
一腹の卵から雄が1匹だけ孵化し,15匹程度の姉妹と交尾した後で母親の体内から出ずに死んでしまうという,
極端に雌に偏った性比になっていることが知られています。これは,局所的配偶者競争が起こるので
やはり前提の一つが崩れているからと考えられます。