1980年代にベンジャミン・リベットによって行われた実験では、任意の時間に被験者に手首を曲げてもらう。
行動の意図が被験者にいつ生まれるかを決定するために、時計の針を見続けてもらって、動かそうとする意識的意図を
感じたときの時計の針の位置を報告してもらった。

Libet は、被験者の脳の活動が、意識的に動作を決定するおおよそ1/3秒前に開始したことを発見した。
これは、実際の決定がまず潜在意識でなされており、それから意識的決定へと翻訳されていることを暗示している。
以上がリベットの実験の要旨だが、しかしよく読むと何か妙な点に気付かれるだろうか。

まず、被験者がどちらの手首を動かす行動意志を決意した、その約1/3秒前に被験者の脳活動 ( 準備電位 ) が
開始されたとのことだが、 ↓ 以下は重要な点
人間の自由意志は行動を選択途上、その時は未だ決意していないと報告するだろう

被験者はその行動意志を固める以前に、被験者の自由な行動選択として様々な可能性を想像していた筈である。
例えば、片方の手首ではなく両方の手首を曲げて実験者を慌てさせる。 両方とも手首を曲げない。
実験がつまらないと言って部屋を出て行く。 手首ではなく別の部分を曲げる。

人間の意志行動は、一つの行動がその脳内に浮かんだ途端にその行動に突っ走る訳ではない

これらは人間に自由意志が存在する場合は、出現可能である。 さらに、行動意志が被験者にいつ生まれるかが
決定されるのは、このような多様な自由度が取捨選択される過程をも含めた上での決定なのだから、この選択過程を
除外して、手首の片方を曲げる決意を固めた時間を被験者に報告させても、何の意味も無いだろう。

なぜなら人間の意志行動は、一つの行動予想がその脳内に浮かんだ途端に、その行動に突っ走る訳ではないから。
それを考えるなら、行動の決意が被験者にいつ生まれるかは、被験者が実験内容を聞いた直後から開始されるのである。
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