世界が待つ日本のILC誘致 村山斉氏
米カリフォルニア大学バークレー校教授
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39743920Y9A100C1KE8000/
2019/1/9 2:00

宇宙の始まりのナゾを調べる次世代の巨大加速器、国際リニアコライダー(ILC)を日本に誘致する構想がなかなか進まない。
タイムリミットが迫っており、日本政府の誘致方針の表明が必要だ。
ILCは世界中の物理学者が欲しいマシンで、欧米は日本と一緒にやりたいと思っている。
日本には大きなチャンスだ。ぜひ誘致に動いてほしい。

ILCは日米欧を中心に国際協力で建設する計画だ。世界中の物理学者が話し合って、どのような装置を作れば良いかを考え、基本的な設計はすでにできている。
建設地も東北地方の北上山地が適当という意見がまとまった。日本政府が誘致方針さえ表明すれば、参加各国が建設費の分担などの具体的な交渉を始められるところまで来ている。

ILCは、欧州の巨大加速器「LHC」で発見され、2013年のノーベル賞の対象となったヒッグス粒子を大量に作り出せる。
ヒッグス粒子は見つかったものの、詳しい性質はまだ分かっていない。また宇宙の4分の1を占める「ダークマター」と呼ばれる物質はまったく正体不明だ。
これらに迫り、宇宙の成り立ちや将来を明らかにするのがILCだ。

ILCの総建設費は約8000億円と見込まれ、厳しい財政下での負担を懸念する意見があることは知っている。基礎科学にかかる資金が巨額になっていることへの批判もあるだろう。
だが先日、ノーベル財団を訪問した際、財団の関係者が「ブレークスルーはすぐに役立つか分からないが、価値が分かる人がいないと乗り遅れる」と基礎科学の大切さを説く意見が出た。
ILC誘致は世界から有能な人材を集めるだけでなく、国際貢献にもつながる。
基礎科学の研究は「これを知りたい」というモチベーションでがむしゃらに進む。
そのために技術開発の面でもむちゃな要求をするから、企業の論理だけではできないブレークスルーが生まれる。
ILCの建設費も、こうした技術革新で30年前の計画当初に比べ20分の1になった。

欧州は19年に次期研究計画の議論を始める。
計画の中に建設費などを盛り込むには、日本の方針を18年中に出す必要があったが、欧州は19年3月7日まで待つと決めた。
電車の出発時刻は過ぎているのに、大事な日本の乗車を待ってくれている状態だ。

まだ間に合う。日本政府は誘致に名乗りを上げてほしい。