”ゼクサス”
”それが貴方の本当の名前です────”

「なわけねーだろ!!!」
HIDEチャンはベッドから起き上がるやいなや、ライト横にあったベアブリックを壁に投げつける
そのままテケテケ歩きで冷蔵庫までたどり着くとアーモンドミルクを手にとって口に含む
さて─────いまこの地球に何かが起きている気がする  それが何なのかはわからない
ゴブリンがいなくなった世界線、ここではHIDEチャンは自力でさまざまな問題に対処していかなければならない
ゴブリンがHIDEチャンに放ったいくつかの語録の中で、一番刺さったものがある
それは「知性は愛されない」ということだった
人は知らぬ間に知性を帯びてしまう

動物愛護について調べた時、ふと、自分が飲まなければならない「お薬」は動物実験を経ていま手元にあることを知ってしまう
だから安易に「動物愛護!!」と大声をあげることをためらう
もし自分や大事な人が死ぬかもしれないという時にはその「お薬」に頼るしかないからだ

同じように環境保護について考えたとき、ふと、身の回りのプラスチックはどれも石油でできていることを知る
じゃあ持続可能な素材ってなに?木材はもちろん駄目だ
再利用された資源ならばいい?
しかし調べれば調べるほど、資源を再利用する際の工程で膨大な電力が必要となることを知ってしまう
さっさと捨ててしまえばそのようなエネルギーはかからないのに
だから安易に「環境保護!」と大声をあげることをためらう

これが知性である
ゴブリンはこの知性を「愛されない」と断じた
おそらくゴブリンとてどちらかといえば知性の側である
つまりゴブリン自身が自分を「愛されない側」だと知っていたのだ
愛されるのはいつの時代も知性ではなく「痴性」である
なんの疑いもなく「動物愛護」「環境保護」を叫べる
「ゼレンスキーは正義」とオリジナル曲まで作れてしまう
この「痴性」はおそらく持って生まれた天性ものである
後天的に身につけることはできない────これが愛される側