>>3-6,13
静岡県ではないけれど、愛知県東三河地方の推量系助動詞の使い分けの例を示す。
通時的には微妙だけど、共時的には非常にクリアな例で、一つのひな形足り得ると思う。
A 話し手(一人称)の意志:裸の未然形(ただし1拍母音を伸ばす。強いて言えば助動詞「ー」)
B 相手方(二人称)への勧誘:助動詞「まい」を、すべての動詞について完全な未然形接続で用いる。
C 客観的状況(三人称)の推量:助動詞「ら」を、終止形接続で用いる
この使い分けが基本。
「わしが東京に土曜日に【行かあ】と思っとったもんだい、鈴木さんも一緒に東京に【行かまい】と言っとっただけどが、
わしのほうが無理になって、結局行かんかっただけどが、でも鈴木さんも用事があったみたいだもんで、一人で東京に【行ったら】」
「いる(〜てる)/おる(〜とる)」以外は、名古屋より静岡寄りの雰囲気があることがわかると思う。
「だら」と「ら」の使い分けについては、共通語の「〜なのだろう」と「〜だろう」の使い分けに近いニュアンスの差がある。
「ら」が無標で、「だら」をあえて使う場合は、断定を一度前に挟みたいニュアンスを含ませたい場合。
この使い分けは、西三河には存在せず、「だら」一本になる。
「ずら」は「ら」と「だら」双方にまたがり、しかも無標なので、上述のニュアンスが消える。ただし老人語に近い。
「ずら」の完了形が「つら」で、「行ったら」と「行っつら」は全く同じ意味。
