名古屋鉄道は10日、名古屋駅周辺で進めてきた大規模再開発を全面見直しすると発表した。延長400メートルに及ぶ巨大ビルの2022年着工を断念、名鉄名古屋駅の4線化計画も含め、24年度をめどに改めて方向性を判断する。新型コロナウイルスの影響による需要の変化や経営悪化を受けた対応で、安藤隆司社長は同日の決算記者会見で「いったん立ち止まって考えたい」と述べた。

 名鉄が2017年3月に発表した計画では、名鉄百貨店本店本館から日本生命笹島ビルまで既存の六つのビルがある区域を一体開発し、南北400メートル、高さ160〜180メートルで30階前後の駅ビルを近畿日本鉄道など計4社で新設する予定だった。安藤社長は、開発規模やビルの形状も含めて再検討するとし、事実上の白紙化に言及した。

 また、名古屋駅の4線化は、線路が上り下り各1本しかなく同じホームから異なる方面に電車が頻繁に出発する現状を解消し、観光客などの利便性を改善する狙い。これについても「ビル開発と一体で考える。4線化が可能かどうかを含めて再検討する」という。

 いずれの計画も、リニア中央新幹線名古屋―品川間の開業を見込んで27年に完成予定だったが、安藤社長は「スケジュール的には難しい」との見方を示した。

 計画見直しには、コロナ禍による名鉄グループの経営悪化もある。同社が10日発表した20年9月中間連結決算は149億円の営業赤字。前期に比べ、不動産事業は分譲マンション販売で増益となった一方、交通、運送、レジャーなどの諸事業は軒並み減益に。特に基幹の交通事業は121億円の営業赤字を計上した。

 21年3月期の連結最終(当期)損益で240億円の赤字(前期は288億円の黒字)を見込む上、今後の感染状況次第で業績がさらに悪化する可能性を示唆した。20年度中にグループ全体で200億円程度のコスト削減を図るとした。安藤社長は「経費や投資の抜本的見直しをしている。新たな事業戦略の策定が急務だ」と強調した。【野村阿悠子】

毎日新聞 2020年11月10日 21時43分(最終更新 11月10日 21時44分)
https://mainichi.jp/articles/20201110/k00/00m/040/304000c