2018年8月9日 19:00 日本経済新聞
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO34008830Z00C18A8910M00
【パリ=白石透冴】アフリカから地中海を通り欧州に入る移民の到着先として、これまでのイタリアに代わりスペインが最多となっていることが国際移住機関(IOM)のまとめで分かった。反移民を掲げる連立政権が6月にイタリアで発足したことなどが影響したもようだ。スペインで今後、受け入れの負担が増大する可能性がある。
IOMによると、今年1月〜7月29日に約5万7千人が地中海経由で欧州に入った。死亡者数は子供を含む1514人だった。
最多の到着先はスペインの約2万3千人で、前年同期より約1万6千人増えた。次にイタリアが約1万8千人で前年同期より8割以上減った。
移民がスペインに向かう傾向は最近になって顕著で、直近2週間の入国者数でみると、同国の5956人に対しイタリアは565人だった。
イタリア行きが減った理由は、同国が2017年からリビア当局と協力して密航の取り締まりを強化していることが挙げられる。スーダン、エチオピアなどの移民は主にリビアの密航業者に依頼して渡航を試みていたが、以前より難しくなった。
もう一つの理由が反移民の極右「同盟」が連立に加わったイタリアのコンテ新政権だ。同盟党首のサルビーニ内相は6月、移民を乗せて接岸しようとした民間の救助船「アクエリアス号」の着岸を拒否。船は受け入れを表明したスペインへ代わりに向かった。
その後もイタリアは移民救助船の入港を拒否し続けているため、船はスペインを行き先に選んでいる。移民の間でもイタリアが反移民、スペインが移民に寛容だと認知されるようになっており、ルートを変更した人々が出たもようだ。
スペインのサンチェス首相は「人道的な悲劇を避ける」などとして受け入れを続けているが、同化政策や福祉などの社会コストがかかることは今後避けられない。
ドイツ、フランスなどで極右政党が勢力を持つなか、スペインは近年の欧州では珍しく極右が弱い寛容な国柄だ。だが流入が急増すれば警戒感が高まる可能性がある。
欧州への移民・難民はシリアからドイツに流入した15年にピークを迎えた。その後トルコの協力を得るなどして流入数は減ったが、各国が受け入れに慎重な対応を始める転機となった。
地中海経由の流入はこれまでイタリアに負担が集中しており、EU各国が有効な対応策を取れなかったことがイタリアで移民排斥の世論が強まり、反移民の政権が誕生する背景となった。
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO34008830Z00C18A8910M00
【パリ=白石透冴】アフリカから地中海を通り欧州に入る移民の到着先として、これまでのイタリアに代わりスペインが最多となっていることが国際移住機関(IOM)のまとめで分かった。反移民を掲げる連立政権が6月にイタリアで発足したことなどが影響したもようだ。スペインで今後、受け入れの負担が増大する可能性がある。
IOMによると、今年1月〜7月29日に約5万7千人が地中海経由で欧州に入った。死亡者数は子供を含む1514人だった。
最多の到着先はスペインの約2万3千人で、前年同期より約1万6千人増えた。次にイタリアが約1万8千人で前年同期より8割以上減った。
移民がスペインに向かう傾向は最近になって顕著で、直近2週間の入国者数でみると、同国の5956人に対しイタリアは565人だった。
イタリア行きが減った理由は、同国が2017年からリビア当局と協力して密航の取り締まりを強化していることが挙げられる。スーダン、エチオピアなどの移民は主にリビアの密航業者に依頼して渡航を試みていたが、以前より難しくなった。
もう一つの理由が反移民の極右「同盟」が連立に加わったイタリアのコンテ新政権だ。同盟党首のサルビーニ内相は6月、移民を乗せて接岸しようとした民間の救助船「アクエリアス号」の着岸を拒否。船は受け入れを表明したスペインへ代わりに向かった。
その後もイタリアは移民救助船の入港を拒否し続けているため、船はスペインを行き先に選んでいる。移民の間でもイタリアが反移民、スペインが移民に寛容だと認知されるようになっており、ルートを変更した人々が出たもようだ。
スペインのサンチェス首相は「人道的な悲劇を避ける」などとして受け入れを続けているが、同化政策や福祉などの社会コストがかかることは今後避けられない。
ドイツ、フランスなどで極右政党が勢力を持つなか、スペインは近年の欧州では珍しく極右が弱い寛容な国柄だ。だが流入が急増すれば警戒感が高まる可能性がある。
欧州への移民・難民はシリアからドイツに流入した15年にピークを迎えた。その後トルコの協力を得るなどして流入数は減ったが、各国が受け入れに慎重な対応を始める転機となった。
地中海経由の流入はこれまでイタリアに負担が集中しており、EU各国が有効な対応策を取れなかったことがイタリアで移民排斥の世論が強まり、反移民の政権が誕生する背景となった。