円安・物価高にあえぐ庶民生活は二の次なのか。日銀は26日の金融政策決定会合で、短期金利の目標を現状の「0~0.1%程度」に据え置くことを決定。前回3月会合でマイナス金利政策を解除して17年ぶりの利上げに踏み切ったが、今回は市場の予想通り利上げを見送った。ハト派の動きを見せる植田日銀では、足元の「円安地獄」を止められそうにない。

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「基調的な物価上昇率に大きな影響は与えていない」──。日銀の植田総裁は会合後の会見で、急速な円安進行についてこう言い放った。政策金利の据え置きが影響し、26日の円相場は約34年ぶりに1ドル=156円台に突入。円売りに拍車をかけ、外国為替市場では1ドル=158円を突破した。

 市場関係者の間では「急速な円安進行に歯止めをかけるため、植田総裁は早期利上げを示唆するのでは」との見方も出ていたが、ほぼゼロ回答。円安進行について、植田総裁は会見で「基調的な物価上昇率に無視できない影響が発生するならば、金融政策上の考慮や判断材料となると考え十分注視していきたい」と答えるにとどめた。

 肝心の利上げについては、物価上昇率が日銀の予想通りに推移すれば「政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と煮え切らない。そもそも史上空前の円安を横目に、なぜ利上げを渋っているのか。経済評論家の斎藤満氏がこう言う。

「前回の3月会合でマイナス金利をやめて、今回も利上げに踏み切るとなると、さすがに連続利上げはマーケットへの刺激が強すぎると判断したのでしょう。そもそも、異次元の金融緩和を続けてきた政府・日銀が利上げに敏感なマーケットをつくってしまったとも言える。政策金利を据え置き、10年国債の買い入れ圧縮にも触れなかったことで、結局、日銀は静観するだけという印象を残してしまった。インフレの進む米国が利下げに足踏みする中、日米の金利差は埋まる気配はなく、マーケットや財務省に対する日銀の過剰な配慮が為替にマイナスに作用しているのです」
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