「ごめんなさい…ごめんなさい…」

 なとりは私を見るなり、会えなかった期間を埋めるかのように謝罪の言葉を繰り返した。
 思わず彼女を抱きとめる。この寒空の中ずっと駅前で私のことを待っていたのだろう、私より僅かに上背のあるその体は冷え切っており、薄ピンクの色付きリップで覆われた唇はわずかに震えていた。

「なとりんは悪くないんだよ…」
「違うんです、私はたまさんから相談を受けていたのにしっかりと向き合わなかった…」

 あなたにも寄り添えなかった、見て見ぬ振りをしてしまった。
 後悔の言葉をしどろもどろになりながら並べ立てる彼女に掛けるべき言葉が見つからない。
 何もできずに彼女の背中に腕を回しながらあたりを見渡す。どうやら駅のイルミネーションの前で抱擁を交わす女二人は物珍しいようで、気温と同じくらい冷たい視線が突き刺さる。

「とりあえず、場所変えよっか」

 なとりの手を引いて、行く当てもなくその場を後にする。
 芯まで冷え切ったなとりの手と繋がれた私の手のひらは、彼女のそれとは対照的に手汗がびしゃびしゃで体温もやたらと高く、なんだかやけにこっぱずかしかった。
 恥ずかしさを置き去りにするように私の歩みは早くなり、彼女は少しバランスを崩す。

 ──そういえば、手を繋ぐのはこれが初めてだね。

 彼女が突然そんなキザなことを言うものだから、私は手だけでなく顔まで熱くなってしまい思わず悪態をつく。

 ──ばか。

 いつのまにか私たちの体温は溶け合って、繋がれたなとりの手はぬくもりを宿していた。