『とある男の最期』

20XX年X月X日、投獄されていたとある男(5X歳)は釈放の日を迎えた
辛い日々から解放された男は、門を出ると何かに突き動かされるように駆け出した

たどり着いたのはネットカフェ
腐った鯖のような匂いに顔をしかめ窓から新鮮な空気を取り込む店員には目もくれず指定された個室に向かった
男はパソコンを立ち上げるや否や即座にブラウザに文字列を打ち込んだ

「鋼兵 アンチスレ【検索】」

検索して男は驚愕した
最新スレである鋼兵アンチスレPart666は数年前にdat落ちしていたのだ
鋼兵炎上まとめ動画「引退宣言後」編もPart66をもって最終回を迎え、全ては終わった過去の出来事になっていた
ネット上に"鋼兵"はすでに生きていなかったのだ
ニコニコやTwitterのパスワードももはや、長い年月を経て記憶の彼方に消え去っていた

――クソッ…

怨嗟とも悲哀ともつかぬ声を漏らした男はおもむろにキーボードを叩き、スレッドを立ち上げる

【刑期を終えても】鋼兵(川本恒平)アンチスレPart667【反省の色なし】

しばらくして、ネット上にはある噂が流れた
見知らぬ謎の人物に関するスレが、ひとりでに立っては埋め立てられていくのだという
……しかし、それも長くは続かなかった

ある時を境に、ぱったりとそのスレは沈黙してしまったのだ
それとほぼ時を同じくして某所のネットカフェにて異臭騒ぎが発生、身元不明の中年男性が冷たくなって発見された
スクリーンいっぱいに羅列された「アンチ死ね」の意味するところを知るものは、もはや誰もいなかった