答えを探るために、研究チームはまずVR空間で23種類の部屋からなる建物を用意しました。
建物には大小さまざまな形・テーマの23部屋があり、それぞれ背景音楽や装飾も異なるよう工夫されています。
まず参加者はヘッドマウントディスプレイを装着してこの仮想空間を体験してもらい、次いで部屋の映像を見た時の脳活動パターンを測定されました。
その後、各部屋に新しい物体(リンゴやキャンディーなど)が1つずつ置かれ、参加者は再びVR内を巡ってどの部屋に何が置かれたかを覚えてもらい、その後でどれだけ鮮明に思い出せるかのテストが行われました。
すると、部屋を見た時の脳活動が安定していた部屋のほうが、思い出しているとき、脳の中で物体のイメージがより強く再現されていました。
言い換えると、ある部屋について脳が毎回安定した「地図」を作れていれば、新たに結びつけた物体の記憶が鮮明に再現される傾向がみえてきたのです。
しかもこの関係は、「その部屋の脳内表現がどれだけ再現されていたか」を統計的に取り除いても残りました。
つまり、「部屋を強く思い出せたからついでに物も思い出せた」という単純な説明では足りず、もっと奥深い部屋の表現そのものの質が、物体との結びつきを強くしている可能性が高いと考えられます。
記憶は単に覚えているかだけではなく鮮明さも重要です
記憶は単に覚えているかだけではなく鮮明さも重要です / 今回紹介している研究では、参加者はどの部屋の物についてもほとんど間違えずに言い当てられる状態でしたが、それでも脳の中をのぞいてみると、部屋によって「その物体のパターンがどれくらい力強くよみがえっているか」がかなり違っており、この違いを「記憶の鮮明さ」の一種として測定対象にしました。/Credit:Spatial contexts with reliable neural representations support reinstatement of subsequently placed objects
さらに研究者たちは、事前に測定した脳活動の“指紋”さえ分かれば、「この部屋に置いた情報は覚えやすいか」をある程度予測できることがわかりました。
これは「新しい知識を身につけるには、まず土台となる知識の地図がしっかりしていることが大事」という直感的な事実を裏付けています。