>>44

重力によって時空が湾曲するというこの驚愕の理論は「一般相対性理論」と呼ばれています。加速運動も扱える一般的な理論だからです。これに対して、初期の相対性理論は等速運動という特殊なケースのみを扱うため、特殊相対性理論と呼ばれています。
アインシュタインの“最大の失敗”?
物理学の2大巨頭であるニュートンとアインシュタインが描き出した重力の姿はそれぞれまったく異なり、同じ存在とは思えないほどです。
その一例は太陽系です。ニュートン力学によれば、太陽と惑星は重力で引きつけ合っており、惑星は慣性で前方に進みながら太陽に向かってつねに落下しています。ところが、アインシュタインの一般相対性理論によれば、惑星は太陽のまわりの湾曲した時空を慣性によって“まっすぐ”に進行しています。さらに、物体が存在する時空そのものが重力を示すため、重力はニュートンの万有引力(=遠隔力)とは異なり、近接力とみなすことができます。
アインシュタインは大学時代の旧友マルセル・グロスマンの手を借りて、リーマン幾何学(※2)という手法を使ってこの重力の理論を定式化しました。それが「重力方程式」です。
たとえば、巨大な銀河などがもたらす強大な重力が“レンズ”のように働いて、観測者から見てさらに遠方の天体の像をゆがませたり複数に見せたりする「重力レンズ効果」(図4)、天体の重力によって光の波長が伸びる「重力赤方偏移」、さらには大質量の物体が急激に動いたことによって時空が伸縮し、それが周囲に広がる「重力波」などです。
「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope: JWST)」が観測した巨大銀河団「エル・ゴルド」。銀河団よりもさらに遠方に位置する銀河の一部(A、B)が、銀河団の重力レンズ効果によって変形して見えています