膨張宇宙理論を覆す大発見を目撃する──特集「THE WIRED WORLD IN 2026」
2025.12.29
https://wired.jp/article/vol58-upending-the-theories-of-an-expanding-universe/
宇宙空間を加速度的に膨張させるダークエネルギーまたは「未知の力」は果たして存在するのか? 科学者たちは2026年、その答えを確実に知ることになる。
この宇宙を引き離す力──天文学者たちが「ダークエネルギー」と名付けたもの──の源を理解することが、いまの物理学で最もホットな話題のひとつとなっている。2026年、科学者たちはついにその答えの一部を手にすることになるだろう。

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宇宙の反重力という可能性は、1世紀以上前のアルベルト・アインシュタインにまでさかのぼる。引力である重力は、138億年前のビッグバン以来、膨張する宇宙を減速させてきた。しかし、1915年に定式化されたアインシュタインの一般相対性理論には、方程式のなかに、押し返す力、つまり反重力を記述する追加項が任意で含まれていた。これは、空っぽの空間が本質的に拡がっていく力をもっていて、物質の引力によって抑制されない限り、自発的に膨張することを意味している。
この空っぽの空間──つまり真空──が力を及ぼすという考えは、量子力学という別の理論によって説明される。量子力学は、原子から恒星まで物質の性質を説明し、現代の技術の多くを支える、史上最も成功した科学理論だ。その予測のひとつは、真の真空など存在しないというものだ。むしろ、量子力学によれば、空間は絶えず沸き立っている。光子、電子、クォークなど、あらゆる種類の粒子が無から出現し、ほぼ瞬時に再び消滅しているのだ。

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2024年、ダークエネルギー・サーベイ(DES)に参加する400人規模のチームが、とある調査の予備的な結果を発表した。チリのアンデス山脈の高地にある4mの望遠鏡に取り付けられた高感度デジタルカメラから得られたデータだ。その暫定的な結論は、ダークエネルギーの反重力作用が徐々に弱まっているように見えるという内容だった。
この結論は数カ月前、アリゾナ州のキット・ピーク国立天文台の望遠鏡を使って宇宙の詳細な3次元マップを作成した、ダークエネルギー分光装置(DESI)を使った別の大規模国際コンソーシアムによる調査でも裏付けられた。

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慎重にならざるをえない理由のひとつは、この結果が確定すれば、現在の宇宙論の理解が完全に覆されてしまうからだ。長年主張されてきた説のひとつは、アインシュタインの重力理論には欠陥があり、修正が必要だという説だ。
別の理論は、宇宙に遍在する新しいタイプの力の存在を仮定しており、それはアインシュタインの示した斥力を模倣しながらも、その強さが数十億年かけてゆっくりと変化していると考える。ほかのアプローチでは、ダークエネルギーを、空間の余剰次元や、ビッグバンから吐き出されたものの、これまで検出されていない捉えどころのないダークマター粒子と結びつけている。

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つまり、標準モデルの綻びを説明する理論には事欠かないというわけだ。どの理論を採用するかによって、遠い未来に宇宙がどう進化するかという予測も劇的に変わってくる。次のデータ公開は26年半ばだ。それによって、暫定的な観測結果が確認されることになるのか、それとも覆されるのか、科学者たちは期待と不安を抱えながら、その時を待っている。