目に見えない無数のワームホールが、時空を歪めて宇宙を広げているとする新理論
公開: 2025-11-21 20:30
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>> ギリシャ・アリストテレス大学などの研究チームは、この問題を解く手がかりとして、宇宙のごく小さな領域で起きている“時空の揺らぎ”に注目した。
>> 宇宙の背景は一枚の滑らかな布のようなものではなく、もっとデコボコとした複雑な構造をしているのではないかと考えたのである。
>> 研究チームが着目したのは「量子泡(りょうしほう)」と呼ばれる極微小な領域だ。
>> 原子よりもはるかに小さなミクロの世界では、物理法則が一時的に崩れ、空間が泡のように沸き立っていると考えられている。この泡の中では、時空がわずかにねじれ、穴が開くことがあるという。
>> もしこの泡の中で、無数の“微細なワームホール”が生まれては消えているとしたらどうだろう。
>> これらのワームホールは、まるで水を吸って膨らむゲル状のビーズのように、時空のすき間を埋めているのかもしれない。
>> ワームホールというと、宇宙船が通り抜けるトンネルを想像する人も多い。しかし、ここで言うのはもっと数学的で、私たちが直接見ることのできない高次元の世界へと続く、ごく小さな穴のような存在だ。
>> こうした無数のワームホールが、私たちの宇宙を形づくる見えない基盤になっている可能性があるというのだ。
>>ワームホールがダークエネルギーの正体か
>> そこで研究チームは、宇宙の膨張速度をめぐる120桁のズレを解消するため、ワームホールの密度を計算式に組み込む新しい手法を試みた。
>> 数学には、空間の曲がり方や形の性質を記述する「ガウス・ボンネ定理」という法則がある。
>> 位相幾何学(トポロジー)と呼ばれる分野で使われるこの定理は、ドーナツの穴の数のように、物体の形が根本的に変わる性質を扱うものだ。
>> 研究チームはこの定理を応用し、時空に開いたワームホールの穴が数式の中で「有効なダークエネルギー」として働くことを示した。
>> つまり、宇宙を押し広げているのは正体不明のエネルギーではなく、無数の微細なワームホールが生まれては消える“かき混ぜ(撹拌)”のような動きそのものだという。
>> この仮説を取り入れることで、アインシュタインの一般相対性理論に基づく計算値と、観測によって得られた宇宙膨張の実測値のあいだにあった120桁もの食い違いが埋められ、理論と現実の整合性が取れるようになる。
>> 研究チームの試算によると、1立方mの空間の中で、毎秒およそ10の16乗個、つまり1京個の微細なワームホールが発生している必要があるという。
>> とてつもない数のように思えるが、量子レベルのミクロな世界では、それほど異常な数値ではないとチームは結論づけている。
>> この研究成果は、アメリカ物理学会の査読付き専門誌『Physical Review D』(2024年発表)に掲載された。