量子トリックにより「観測しないこと」で物体を冷却することに成功
2025.06.04 18:00:06 WEDNESDAY
>>>イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)で行われた研究によって、「『光子が出なかった』と判定された瞬間 を選び出すことで、従来の冷却限界をさらに押し下げられることが実証されました。
>>レーザー冷却の技術のおかげで、光の圧力で原子を宙に閉じ込めたり、鏡のような機械振動子をほぼ量子基底状態まで冷却したりすることが可能になりました。
>>研究チームは、このアイデアを確かめるために、特殊なガラス製の球体を用意しました。
>>この球のふちを赤いレーザー光が何千周も回り続ける間、ガラス自体がわずかに震えて超音波のような振動(音波)が生まれます。
>>光と振動は同じ場所に長く閉じ込められるので、微小球の中でも光や音の波が球の内壁に沿って何度も回り続け、エネルギーが逃げにくい状態になります。
>>光検出器として単一光子検出器という非常に高感度なセンサーを用い、一瞬ごとに「散乱光の光子が一個検出されたか、それとも一個も検出されなかったか」を判定できるようにしました。
>>その観測結果と同時に、別の手法(ヘテロダイン計測という方法)で球内部の音波の振動の強さ(温度に対応)を測定しました。
>>その結果わかったのは、「光子が一つも検出されなかった」瞬間の音波は、通常よりも静か(振動が小さい)になっていたということです。
>>逆に「光子が一つ検出された」瞬間には、音波の振動はいつもより大きく(うるさく)なっていました。
>>つまり、散乱光が出なかったという“何も起きなかった”観測結果によって、音波の振動が普段よりも抑えられていたのです。
☆>>この結果は一見すると奇妙ですが、光の散乱と音波の振動の間に相関関係があることを考えれば説明できます。
>>光と音が強く結びついたこの実験系では、散乱光子が「ゼロだった」という観測情報を得た時点で、「音波のエネルギーがより低い状態だった」と状態が更新される(確からしくなる)と理解できます。
>>共同第一著者の一人であるエヴァン・クライヤー=ジェンキンスさんは「最初はこの結果にとても驚きました。しかし、我々の実験では光と音が相関しているため、測定で得られた情報によって音波の状態をさらに冷却できることがわかったのです」と説明しています。