不完全なワクチンでは危険性が高まるか?

 順調に進んでいるワクチン開発だが、実用化に向けた懸念もある。
その1つが、ワクチンの接種などにより起こりうる「抗体依存性感染増強(ADE)」と
呼ばれる現象だ。本来、ウイルスなどから体を守るはずの抗体が、免疫細胞などへの
ウイルスの感染を促進。その後、ウイルスに感染した免疫細胞が暴走し、あろうことか
症状を悪化させてしまうという現象だ。

 ADEの詳細なメカニズムについては明らかになっていないことも多い。
ただこれまでに、複数のウイルス感染症でADEに関連する報告が上がっている。
例えば、コロナウイルスが原因となる重症急性呼吸器症候群(SARS)や
中東呼吸器症候群(MERS)に対するワクチンの研究では、フェレットなどの哺乳類動物に
ワクチンを投与した後、ウイルスに感染させると症状が重症化したとの報告があり、
ADEが原因と考えられている。

 また、ネコに感染するネココロナウイルス感染症でも、ウイルスに対する抗体を持った
ネコが、再び同じウイルスに感染することで重症化するとの研究報告がある。
ネココロナウイルス感染症の研究に取り組む、北里大学獣医伝染病学研究室の
高野友美准教授は、そのメカニズムについて、「抗体と結合したウイルスが、抗体の
一部分を認識する受容体を介してマクロファージに感染する。すると、マクロファージは
症状を悪化させる因子を過剰に放出し、結果的に症状が悪化してしまう。
抗体の量が中途半端であると起こりやすいと考えられているが、どのような条件で
起きるのかはよく分かっていない」と説明する。