ウミウシ、頭から胴体再生 自ら切断後―寄生動物排除が目的か・奈良女子大

 貝殻のない貝の仲間ウミウシで、頭部から胴体を自ら切断した後、胴体が再生する種が発見された。
 奈良女子大の大学院生三藤清香さんが鹿児島市の海岸で採集し、代々飼育している「コノハミドリガイ」と広島県尾道市の向島で採集した「クロミドリガイ」で再生を確認。
 遊佐陽一教授と共に論文を8日付の米科学誌カレント・バイオロジーに発表した。

 動物が尾や足を自ら切断する「自切」は、トカゲのしっぽ切りが有名。
 ウミウシも体の一部を切断、再生する種がいるが、心臓がある胴体の再生が報告されたのは初めて。
 敵から逃げるため切断するのではなく、胴体に巣くい、産卵を妨げる寄生動物の排除が目的と考えられる。
 再生能力が高いプラナリアと違い、胴体から頭部は再生しない。

 三藤さんは「2018年にコノハミドリガイの頭と体が分離しているのを偶然見つけ、頭が元気そうに動いていたので驚いた。近いうちに死ぬと思っていたら、餌を食べて体が再生したのは衝撃的だった」と語り、「他種でも見つかる可能性があり、自切の進化を調べたい」と話している。

 ウミウシの一部は餌の藻類から葉緑体を取り込み、光合成をさせて栄養を得ている。
 コノハミドリガイなど2種もこの能力があり、胴体の再生まで生存できる。

 体長3〜4センチのコノハミドリガイの観察では、頭部から胴体を切り離した後、数時間で餌の海藻を食べ始めた。
 約1週間で心臓を含む胴体が再生し始め、約3週間でほぼ再生した。
 年老いた個体では頭部が餌を食べず、死ぬ例もあった。
 切断は首の決まった位置で起きるとみられ、細い糸で軽く絞めると自切を誘導できた。

時事通信 2021年03月09日01時08分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021030900042