忽那賢志 | 感染症専門医

東京都を中心に新型コロナ患者数の増加が止まらない状況が続いています。

国内の感染者数は3万人を超え、新規感染者数も減る気配がありません。

一方で、感染者数は増え続ける中で重症者数や死亡者数が増えないことについて「ウイルスが弱毒化しているため」あるいは「夏は免疫力がアップするから」だという言説が散見されますが、今のところは特に根拠はありません。

根拠のない楽観論に惑わされず、必要な対策を続けていきましょう。

■入院者数は増えているが重症者数は増えていない

確かに現在の入院患者数の1105人、そして重症者数16人となっており入院者数と比べても重症者数の数は多くありません。

例えば緊急事態宣言時のピーク時には入院者患者数1413人に対し、重症者数は105人となっていました。

比率からすれば重症者数は今は少ない状況と言えます。

しかし、これをもって「ウイルスが弱毒化した」と言えるのでしょうか?

結論から言うと、言えません。

以下にその理由を述べます。

■第1波では診断されていなかった軽症例が診断されている

第1波では、感染者数の増加に検査数が追いつけず、ピーク時には検査陽性率が30%を超えていました。

この時点での1日当たりのPCR検査数は320件と、患者数の増加に追いつけていない状況でした。

つまり、新型コロナに感染しているのにPCR検査が実施されずに診断に至らない事例が相当数あったものと考えられます。

軽症例については当時「4日ルール」などもあり検査の敷居がやや高かったため、重症例の方が優先的に診断されていた実態があります。

おそらく第1波のときも若者を中心に軽症者や無症候性感染者はたくさんいたのでしょう

さて、現在はと言いますと、1日当たりのPCR検査数は3600件と10倍ほどに増加しており、検査陽性率も6%台を維持しています。

つまり第1波と比較すると、軽症例を含めて感染者が適切に診断されているものと考えられます。

第1波では氷山の一角しか診断できていかなった新型コロナが、今では検査体制の強化によってもう少し感染者の全体像が見えるようになってきている状況と考えられます。

これが、第1波と比べて感染者全体に占める重症者数が少ない理由の一つです。

極端な例では、ベトナムは現在までに400例以上の新型コロナ症例が診断されていますが、これまでに死亡者はいません。

これは、軽症例や無症候性感染者も徹底的に診断を行い、速やかに隔離をしていることから、重症化しやすい高齢者などに感染が広がらず封じ込めができているためです。

当然ですが、ベトナムの新型コロナウイルスが弱毒化しているわけではありません。たぶんベトナム人は誰もそんなこと言っていません(ベトナム人全員に聞いたわけではありませんが)。

続きはソースで

https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200726-00189953/