■微小生物の驚きの多様性、甲羅の上に「文字通り『世界』がある」と研究者

 アカウミガメ(Caretta caretta)は世界中の海を数千キロにわたって移動する。だが、一人で孤独な旅をするわけではない。ある研究から、アカウミガメの甲羅には驚くほど多様な小さな生きものたちが大勢乗っていることが明らかになった。

  5月20日付けの学術誌「Diversity」に掲載された論文によると、アカウミガメは平均3万4000匹もの小型底生動物(メイオファウナ:体長0.032〜1mmの水生底生生物)を背中に乗せているという。あるアカウミガメは、線虫、甲殻類の幼生、エビなど、約15万匹もの生物を運んでいた。

「そこには文字通り『世界』があります。生物の上にこのような多様性が存在することがわかり、興奮しています」と、米フロリダ州立大学の海洋生態学者イェルーン・インゲルス氏は話す。

 インゲルス氏のチームは、それまでアカウミガメなどのカメの上からは見つかっていなかった小型底生動物を100種類以上発見した。そのほとんどは線虫だ。2018年6月に米フロリダ州のセント・ジョージ島にやってきた24匹のアカウミガメを調べたことがこの発見につながった。

 インゲルス氏によると、カメにヒッチハイクしている生きものがいることは、以前からわかっていた。だが、ここまでの数と多様性があることはわかっていなかった。

 一部の小型底生動物は特定の地域にしかいないので、この小さなヒッチハイカーたちを研究すれば、ウミガメの移動の追跡や今後のアカウミガメの保護に役立つかもしれない。また、微小生物がどのように海を移動しているかはよくわかっていないが、その解明につながる可能性もある。
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■甲羅の上の多彩な面々

「小型底生動物は、他の生きものが入り込むことができない小さな空間に入ることができます」とインゲルス氏は言う。そのため、カメの上にこのような生きものがいることは予想されていた。しかし、これほどの数がいることは驚きだった。

 見つかった生きものには、線虫も含まれている。これは、地中で広く見られるミミズなどの生きものによく似ている。また、端脚(たんきゃく)類と呼ばれるエビのような生きものや、カイアシ類と呼ばれる小型甲殻類、さらにはヒドロ虫と呼ばれるクラゲのような捕食動物も見つかった。

 インゲルス氏は、甲羅の上では厳しい生存競争が繰り広げられていると述べている。エビやカニなど、大き目のヒッチハイカーはすぐそばにいる小さな生きものを狙うことが多い。線虫は甲羅の上のバクテリアや、デトリタスと呼ばれる死んだ有機体の堆積物を食べるが、場合によっては別の線虫を食べることもある。

「とても小さな世界ですが、非常に多様で、さまざまな相互作用が起こっています。しかし、詳しいことはまだほとんどわかっていません」

 フジツボなどの大きなものの中には、固着して甲羅を傷つけたり移動の邪魔になったりするものもいる。しかし、カムフラージュという点では役に立つ。一方、小型底生動物は甲羅を傷つけることはないと思われる。「もちろんカメにも寄生生物や有害な生物はいますが、小型底生動物は違います」とインゲルス氏は言う。

 スペイン、バレンシアの海洋学財団でウミガメを研究しているネイサン・ロビンソン氏(今回の研究とは無関係)は、ウミガメの甲羅に多様な生物がいることには納得できると話す。「ウミガメという船は、海を移動する完璧なプラットフォームです。食べものが豊富な海流にいつも連れて行ってくれるのですから」。これは、フジツボやカイメンなど、触手やえらなどでエサを濾過するように食べる動物には大きなメリットになる。

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