→宇宙を定義する基礎物理定数が、ブラックホール周辺では変化することが示唆されていた
→微細構造定数を調べることで、超大質量ブラックホール周辺でも基礎物理定数が保たれていることがわかった
→基礎物理定数がなぜその値をとるかは、誰もわからない

現在の宇宙の姿を決めているのは、20数個ほどの基礎物理定数だと考えられています。

この基礎物理定数は、既存の物理学に従えば、宇宙のどこでも通用するものです。例えば、私たちの銀河と、お隣のアンドロメダ銀河では、光速や電荷の値は同じになるはずです。

しかし近年、いくつかの研究で、ブラックホール付近では基礎物理定数が変化していることを示唆する報告が行われていました。

もしこの報告が事実ならば、ブラックホールの周辺は、地球での物理法則が通じない別宇宙に等しい領域ということになります。

そこでフランスの研究者たちは、私たちの銀河の中心にあるとされる、超大質量ブラックホール周辺の基礎物理定数を調べるこで、論争に決着をつけようと試みました。

物理定数は本当に定数なのでしょうか? そしてもし定数だとしたら、何がそれを決めているのでしょうか?

研究内容はフランス国立科学研究センターのヒース氏らによってまとめられ、1月23日に学術雑誌「Physical Review Letters」に掲載されました。

Search for a variation of the fine structure constant around the supermassive black hole in our Galactic Center
https://journals.aps.org/prl/accepted/76075Y16Z6910072309225d6b7f494b4528e3aa69#abstract
https://i1.wp.com/nazology.net/wp-content/uploads/2020/02/Depositphotos_6069888_s-2019.jpg

■極端な環境でも物理定数が不変かを調べる

観測対象に選ばれたのは、私たちの天の川銀河系の中心部にある、超大質量ブラックホールの周辺領域です。

研究者たちはこの領域の微細構造定数を調べることにしました。

微細構造定数とは、基礎物理定数の1つです。原子内の電子が軌道を遷移するときに出す光のエネルギーが、わずかに分裂していることを論理的に解明するために使われてきました。微細構造とは、この光のエネルギーが細かく分裂した部分を指します。

この分裂パターンがブラックホール周辺でも地球と同じならば、両地点の微細構造定数が同じだと言えるのです。

ただブラックホールまでには膨大な距離があるために、具体的な観測にあたっては、ブラックホール周辺を漂っている星の大気原子の吸光と発光のスペクトルが調査されました。

観測値を計算した結果、ブラックホールの周辺でも地球と同じ微細構造定数が保たれていることがわかりました。

■定数の正体を探る

今回の研究で、微細構造定数が宇宙のどこでもおおよそ1/137の値をとることがわかりました。

しかし、そもそもなぜ137という数字が微細構造定数に現れるのかは全く謎のままです。

偉大な物理学者のファイマンも「全ての物理学者は、この数字(137)がどこから現れたのか知りたい。もしかしたら円周率や自然対数の底と関係しているのかもしれないが、誰もわからない。人間の理解が及ばない魔法の数字だ」と述べています。

測量技術の発達によって基礎物理定数を限りなく正確に導き出せるようになっても、その数字でなければならない理由を説明できる人間は誰もいないのです。

もしその理由がわかるときがきたら、本当の宇宙の姿を解き明かせるかもしれません。

https://nazology.net/archives/53076