■武器は載せれば載せただけ強い…のか?

ロシア・ソ連は時々「こんなもの本当に作っちまったのか」と思わせる、西側とは違う発想の“ゲテモノ兵器”を登場させます。

 旧ソ連時代に「BMP-3」という装甲車が作られました。これは「歩兵戦闘車」と呼ばれる装甲車で、歩兵を運び、歩兵の戦闘を支援するのが任務ですが、その武装にびっくりさせられました。砲塔は小さいにもかかわらず、100mm砲に同軸の30mm機関砲と7.62mm機銃という三連装で、しかも主砲の100mm砲は砲身から砲弾のみならず対戦車ミサイルまで発射できる「ハイブリッドガン」だったのです。つまり四種類の武装を載せているわけで、長射程の対戦車ミサイルから威力のある大砲、連射の効く機関砲、機関銃と、見かけは「全部載せ」、最強の武装です。

 旧ソ連の設計者は、あらゆる敵に対抗できる「万能兵器」を夢見たのです。いまでは歴史のかなたに消えた「多砲塔戦車」でも見られるように、ひとつの車体になるべく多くの武装をさせ、多機能を持たせようというのは、いつの時代も設計者や用兵家の理想のようです。

ミサイルが実用化され始めた1960年代、将来は、狙えば必ず命中する「必殺」のミサイルが登場し、大砲は時代遅れになってすべてミサイルに替わるという、SFチックな「ミサイル万能論」の唱えられた時期がありました。そうしたなか、戦車にもミサイルを載せようと考え出されたのが、普通の砲弾とミサイルが両方撃てる、前出の「ハイブリッドガン」です。

 やがて、アメリカと当時の西ドイツが1964(昭和39)年から共同開発していた試作戦車MBT70に、「XM150砲」というハイブリッドガンが載せられました。XM150砲の口径は152mmという大口径で、各種砲弾と専用の対戦車ミサイル「MGM51『シレイラ』」が発射できました。

■ミサイルと大砲両方撃てれば最強! のはずが

 しかし案の定というべきか、ハイブリッドガンであるXM150砲は、砲弾とミサイルふたつの照準と誘導システムを組合せた、複雑な構造で故障の多い難物でした。

精密品で、当時の技術では目標命中まで誘導し続ける必要があり、最大射程は3000mでしたが、目標に到達するまで10秒以上かかりました。命中率は大砲より良いとはいえ、とても「必殺」と呼べるレベルの代物ではありません。しかも、ミサイルの価格は砲弾の20倍以上でした。

 冷静に考えると、わざわざ二重の複雑な射撃統制装置を開発するより、通常砲弾専用の高度な射撃統制装置を開発して、砲弾の命中率を高めたほうが実用的でした。結局、西ドイツはハイブリッドガンの開発を諦めます。そしてMBT70戦車の開発自体も放棄されてしまいます。

一方のアメリカは「ミサイル万能論」にこだわり続け、「シレイラ」ミサイルが使えるハイブリッドガン「M81砲」をなんとか完成させました。このM81砲はM551「シェリダン」空挺戦車とM60A2戦車に搭載されました。しかし複雑な構造による不具合は解決されず、M60A2は1966(昭和41)年の採用決定から部隊配備まで6年もかかってしまいました。配備後も故障の多さに悩まされ続け、現場部隊の評判も芳しくなく、結局、西側陣営においてハイブリッドガンはモノにはなりませんでした。


■砲身から「シレイラ」ミサイルを発射するM551「シェリダン」空挺戦車(画像:アメリカ陸軍)。
https://contents.trafficnews.jp/post_image/000/034/963/large_181218_tank_05.jpg
MBT70のXM150砲で使用するMGM51「シレイラ」ミサイル。こまめな整備が必要な精密品だった
https://contents.trafficnews.jp/post_image/000/034/961/large_181218_tank_03.jpg
アメリカが完成させたハイブリッドガンM81砲
https://contents.trafficnews.jp/post_image/000/034/964/large_181218_tank_06.jpg
車内から見たXM150砲の砲尾
https://contents.trafficnews.jp/post_image/000/034/962/large_181218_tank_04.jpg
96K6「パンツィリ」の砲塔アップ。左右に分かれた12本のミサイルランチャーと4連装の機関砲が分かる
https://contents.trafficnews.jp/post_image/000/034/972/large_181218_tank_14.jpg

乗りものニュース
https://trafficnews.jp/post/82412
続く)