■私たちの食卓からバナナが消える!? 病害によってバナナの絶滅リスクが指摘されている

2016年時点でおよそ年間80億ドル(約8880億円)規模にのぼるバナナ産業。その生産量も2000年から2015年までに年率3.7%で増加し、2015年時点で1億1790億トンとなっている。バナナは、日本でも主要な果物として消費され、1人あたりの年間消費量は2009年時点で7.4キログラムだ。

世界では1000品種以上のバナナが生産されているが、なかでも生産量全体の約47%を占めている代表的な栽培バナナがキャベンディッシュだ。1ヘクタールあたりの収量が多く、茎が短いため台風などの自然災害にも影響を受けづらいのが特徴で、日本でも広く販売されてきた。

■新パナマ病でキャベンディッシュの絶滅リスク

しかし、今、新パナマ病による病害によってキャベンディッシュの絶滅リスクが指摘されている。

パナマ病とはバナナの根の植物病害で、フザリウム属の真菌(病原体としての菌類)が根から侵入し、導管を通じて感染が広がると、維管束が破壊され、立ち枯れを起こす。

すでに新パナマ病の感染は、アジア・アフリカ・中東・オーストラリア・中米に広がっており、化学防除が感染防止に効果がないこともわかっている。

とりわけ、キャベンディッシュは、すべてが互いに同じ遺伝子を持ち、遺伝的多様性に乏しいため、いったん新パナマ病に感染すると、瞬く間に被害が広がってしまう。

■期待の別種は、わずか5本の成木が確認されているだけ

このような課題の解決策として有力視されているのが、新パナマ病に免疫を持つとみられるマダガスカル原産の野生種とを組み合わせた品種改良だ。この野生種はマダガスカルバナナと呼ばれ、キャベンディッシュと異なって種子があり、味はよくない。

また、林縁に生息するため、自然災害や森林火災、森林伐採などの影響を受けやすく、現在、マダガスカル西部の熱帯雨林でわずか5本の成木が確認されているのみだ。

国際自然保護連合(IUCN)では、絶滅のおそれのある野生生物としてレッドリストに登録している。

■マダガスカルバナナの保護は極めて重要

英キュー王立植物園のリチャード・アレン氏は、BBC(英国放送協会)の取材において「マダガスカルバナナにはパナマ病はないので、おそらく、この病害に対抗する遺伝形質があるのだろう」との見解を示す一方、「マダガスカルバナナを実際に研究するまではよくわからない。

また、このバナナが現存しなければ、研究もできない」と述べている。また、マダガスカルの自然保護に注力するライリマナナ博士も、「マダガスカルバナナの保護は極めて重要です。このバナナは長い種子を持っており、種子から遺伝子構造を解析することができるかもしれないからです」とコメントし、品種改良の観点からも、マダガスカルバナナを積極的に保護する必要性を訴えている。

私たちにとっても身近な食料であるバナナが入手困難となる時代がやって来ないことを祈りたい。

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■動画
Banana Disease - Behind the News https://youtu.be/pgnvALN20sQ

ニューズウィーク日本版
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