やはり、まったく分かっていない連中ばかりである。
自我、あるいは自分を認識するということが恐ろしく分かっていない。

もし、世界中の人間が自分であり、自我あるいは心は一つしかなくて
すべてネットワークで繋がっていれば問題はない。
いろんなことを同時にしていても自我は一つなので「ながら作業」をしているだけだ。
どれもが自分であり、差異はまったくない。

しかしそのネットワークを切ってしまえばどうなるか。
どの人間が自分になるのか。自分の自我あるいは心は
いったい誰にあることになるのか。

この場合、すべての人間が自分であるというのはまったくの誤りだ。
ネットワークを切ったのだから、互いに他人にしか見えないからだ。
自我の数は、人間の数だけあることになる。
そう、それは今現在の状況そのものであるのだ。
今の世界こそがネットワークの切れた他人ばかりの世界なのである。

宇宙最大の謎。
我々は物質で出来ているから原理的に自我はコピーできるはずである。
しかし、コピー元とコピー先がネットワークによってシンクロ(同期)されていないとき、
2つのうちどちらが連続して自分だと認識するのか、思考実験ですらまったくの謎なのである。

重要なのは、ネットワークでシンクロされていない自我はただのクローンであり、
まったくの別人格であり、自分に非常によく似た思考や感情を持つ他人にすぎないということである。
これを「同じ自分」だと思うようでは、この話が理解できていないのである。

くっくっく