>>367

続き

しかも、
湾岸エリアにあるタワマンには塩分が混じった雨風が吹き付けるので、コーキング剤の劣化が早まる可能性も指摘されている。
この15年が更に短くなる可能性すらあるのだ。
 だが、タワマンは階数が高いため、外壁の修繕工事が通常のマンションに比べて格段に難しい。
普通のマンションなら、建物のまわりに足場を組めば外壁の修繕工事は容易だ。しかし、工事用の足場は
17階あたりまでしか組めない。それから上はどうするのか?
 現状では、屋上からゴンドラを吊るして作業するやり方が採用されることが多い。しかし、これだと、
強風時には作業ができないので、工事期間が長くなる。タワマンは建築時には1カ月に2層が出来てしまうのに、
外壁の修繕工事は1カ月に1層。60階のタワマンなら計算上43カ月もかかることになる。
 さらに深刻な問題はその費用だ。通常のマンションなら、外壁の補修を伴う大規模修繕工事の費用は
戸当たり100万円程度が目安だ。しかし、タワマンの場合は戸当たり200万円以上。これも昨今の人件費の高騰で、
値上がり傾向にある。今後は300万円程度を見込んだ方が良い。多くのタワマンでは、
何とか第1回の大規模修繕は行える。しかし、2回目はエレベーターや上下水道管の取り換えが伴うので、
1回目よりも費用がかさむと考えるべきだろう。
 だから毎月徴収する修繕積立金の値上げが必要となる。値上げには、管理組合の総会で値上げ議案の
議決という手続きを経る必要がある。賛成多数で値上げしても、経済的に払えない人も出てくる。
 2回目の大規模修繕を乗り越えても、3回目はどうだろうか。おおよそ建築後45年から50年あたり。
私は半分以上のタワマンでは、住民の経済的理由などで3回目以降の大規模修繕は不可能になると予測する。
 通常のマンションは、細やかにメンテナンスを行えば50年以上住めるのはほぼ確実。
現に60年以上も十分使用に耐えたマンションもあった。だが、タワマンに限っては「45年限界説」が有力そうである。
榊淳司(さかきあつし)
不動産ジャーナリスト。1962年京都市生まれ。同志社大学法学部、慶應義塾大学文学部卒。1980年代後半から30年以上、マンションの広告、販売戦略に携わる。著書に『限界のタワーマンション』『マンション格差』など
特別読物「実態は『超高層レオパレス』 資産下落と階層差別の『タワマン残酷物語』」より