「沈下は織り込み済み! 関空ターミナルのヒミツ」

 こうした地盤沈下は、人工島全体で同一のペースで起こるわけではありません。
空港施設の建設などにより地盤にかかる重さが場所によって異なったり、
また洪積層の砂の層と粘土の層で厚さが異なったりするため、
沈下する速さにも差が生じてきます。これを「不同沈下」といい、
関港が現在まで抱えている問題です。

 不同沈下はそのままにしていると、ターミナルビルなどの施設にひずみが生じ、
ひび割れたり傾いたりと、大きな影響を及ぼします。
そのため、長さ1700mにも及ぶ第1ターミナルビルは、
建物が複数のパーツに分かれており、パーツどうしの連結部に蛇腹のようなジョイントを用いることで、
不同沈下による影響を軽減しています。


 また、ターミナルビルには全部で906本の柱があり、
これらすべてに対してジャッキアップシステムが組み込まれています。
ビルの傾斜角が管理値400〜500分の1を超えると、
最大300tを持ち上げられる油圧ジャッキで柱を持ち上げ、
フィラープレートという鉄板を挟み込んで柱の高さを調整します。

こうして建物全体が平行に保たれるように調整しているのです。
建物への影響を考慮して、持ち上げる高さは最大10mm。
非常に大規模でありながら精密な作業が、深夜に行われているのです。

 また、埋め立てによって完成した空港島は高波の被害も受けやすくなっています。
地盤改良のあと、空港島は護岸工事が行われ、高波に対処してきましたが、
近年では予想を上回る高波に襲われることもしばしば。
開港後も計画的に護岸のかさ上げ工事や補強工事が行われてきました。

2期島が2018年台風21号の被害をほとんど受けなかった理由は、
2014年秋から2018年夏までかけて行われていたかさ上げ工事のおかげといえます。

   https://trafficnews.jp/post/81907/3