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■衰退の一途をたどる老舗繁華街「栄」

 一方、栄地区の集客力の低下は、目に見えて大きくなっている。老舗百貨店丸栄と向かい合っていた
書店・丸善の間の通り(呉服町通り)は、通称「プリンセス大通り」と呼ばれる。丸栄、丸善、明治屋、ダイ
エーなどが並び、飲食店も数多く、名古屋有数の歓楽街だった。しかし、丸善も明治屋も移転し、ダイエ
ーは閉店した。現在も飲食店数は多いが、かつての繁栄から比較すると影は薄くなった。

移転の一時閉店で最後のあいさつをする丸善名古屋栄店の従業員たち
=2012年6月24日、佐々木順一撮影
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 知人の女性会社員(40代)は、「買い物する場所が変わってきた。栄に出なくとも名駅(名古屋駅)で
十分」と言う。「この10年で郊外の大型ショッピングセンター(SC)やモールが次々開業し、休日に栄に
出かける習慣がなくなった」(男性会社員・50代)と言った意見も多い。

 もともと中部圏は自家用車の移動が多く、郊外型店舗が急速に発展してきた地域で、名古屋駅周辺
の再開発とほぼ同じ時期に、市内に大型SCが続々開業した。03年7月にイオンモール熱田(開業当初
はイオン熱田ショッピングセンター)、06年3月にイオンモールナゴヤドーム前(同イオンナゴヤドーム前
ショッピングセンター)ができた。市内中心部でも撤退・閉鎖された工場跡地などに大型SCが進出した。

 また、名古屋市に隣接する長久手市にもロードサイドの大型店舗が次々に開業している。昨年末に約
200専門店が入るイオンモール長久手が開店し、今年秋にはスウェーデン家具大手イケアが大型店を
開業予定だ。

栄地区のサンシャイン栄の観覧車から眺める名古屋駅前の高層ビル群
=2005年6月10日、片山喜久哉撮影
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■名駅前にすべてをつめこんだ「チグハグ感」

 名古屋駅前のJRゲートタワーのテナントは、151店舗のうち55店舗が東海地方初出店の触れ込みだ。
しかし、逆に言えば、その他の店舗はすでに名古屋市内にも出店しているのである。栄地区にある店もす
べて名古屋駅前にそろったことになる。

 前回、JRゲートタワーには「チグハグ感」があると指摘した。商業集積地の持つあらゆる機能を名古屋駅
前に再構築し、縦横に配置したからだ。栄地区の「従来の横に広がる商店街」が、名古屋駅前では「縦に延
びたビルの中に集約された」のである。傘をさす必要も地下鉄やバスに乗る必要もない。空調管理されたビ
ルを上下左右に移動して、買い物や飲食、医療、保育、映画などあらゆるサービスを受けることができるよ
うになった。

名古屋駅前のJRゲートタワーには、モールから家電量販店、ファストファッション、ホテルなどが入る
=戸嶋誠司撮影
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 名古屋市内の主要5百貨店が、4月の売上高を5月1日発表した。名駅地区の高島屋、名鉄百貨店はと
もに開業効果もあり増収で、栄地区の丸栄、三越、松坂屋はすべて減収だった。各地区の売上高は、栄地
区が約151億円(前年同月比4.5%減)、名駅地区が約148億円(同12.2%増)と拮抗(きっこう)してい
るが、売上高の逆転は間近だろう。

 栄地区の関係者には、名駅地区への一極集中が進むことへの懸念を持つ人が多い。名古屋市はそうした
声に押されて、リニア中央新幹線の開業(27年予定)までの栄地区のまちづくりの基本方針「栄地区グラン
ドビジョン」を16年に策定している。しかしこれには、名駅地区への商業集積の移動に対する具体策は示さ
れていない。一連の動きは民間企業の事業活動で、行政が行えることは限られているからだ。