そりゃあ東京はいい。
 なんでも揃っているし、なんでも高水準で、なんでも選べる。
 
 でも、裏を返せば、なんでも揃っているなかから何かを選ばなければならないし、天国と地獄ほどの個人差・世帯差のなかで激しく競争しなければならないってことでもあるのだ、東京ってやつは。
 
 それに比べれば、いつまでも東京を知らない純然たる地方民や、郊外でいわゆる「マイルドヤンキー」として過ごす人は、諸々の競争、諸々の高コスト体質が強いる消耗から「降りる」ことができる。
というより「降りている」こと自体に気づかないから、東京の眩しさに自意識をやられて変なコンプレックスを持たずにも済む。
主観的な幸不幸で考えるなら、東京の諸競争のスピードと無縁で過ごせるのは、ただそれだけで大きなメリットだし、経済的・心理的コストを大幅に軽減できる秘訣でもある。