<中京都構想>暗礁に 知事と市長、枠組み巡り対立

 愛知県と名古屋市を合体する「中京都構想」について、河村たかし名古屋市長は9日の定例記者会見で「このままでは議論を
進めることはできない」と述べ、構想推進に向けた有識者らの会議の開催を当面見送ることを表明した。同構想は大村秀章愛知県
知事と河村市長が共同マニフェストに掲げたが、中京都の枠組みを巡る2人の間の溝は深く、構想は暗礁に乗り上げた。
 「(大村知事の姿勢は)アンビリーバブル(信じられない)ですわ。中京都をどういう形にするか、大いに議論すればいい
じゃないですか」
 河村市長は9日の会見で、知事への不満を噴出させた。「大村さんは愛知県の形のまま名古屋市と一体化すると言うけど、それ
じゃ名古屋市は解体するんですか。市民は支持しないと思いますよ」と、強い口調で名古屋市「分割」への危機感をあらわにした。
 中京都のエリアやその中での自治体の区分などの枠組みはまだ議論されていない。河村市長は「名古屋市を解体しない」と以前
から主張。名古屋市が周辺の自治体と連携する「尾張名古屋共和国構想」を打ち出し、共和国を含めて中京都の枠組みを議論する
よう大村知事に呼び掛けた。大村知事は共和国構想を議論の俎上(そじょう)に載せたくないとみられ、市長の呼びかけを拒否
する姿勢だ。
 河村市長によると、7月4日に知事と話し合ったが、議論は平行線のままだったという。
 名古屋市幹部は「都構想は具体的な議論が何もないが、共和国は自治体同士で観光、インフラなど課題を整理でき、具体的な
メリットがある」と共和国構想を優先したい考えだ。市議の間にも共和国構想に賛成する声が強い。
 ある市議は「県と市が合体したら市はなくなる。河村市長もそう思って共和国構想を打ち出したのでは」とみる。共和国構想推進
に向け、今月31日には尾張地区の首長を集めた「尾張名古屋の行く末を考える会」の第3回会合が愛知県南知多町で開かれる。
 一方、愛知県幹部の一人は「共和国は名古屋市が大きくなるというだけ。県と市を合体する中京都構想とは矛盾しないはず」と語る。
しかし「既に行政の話ではなく、大村知事と河村市長の間の政治の話になってしまった」と述べ、行き詰まりの打開は難しいとの
見方を示す。
 知事、市長と有識者が中京都構想の骨格を決める「中京独立戦略本部」は3月までに2回会合を開いたが、その後議論は進んで
いない。委員の作家、井沢元彦さんは「焦って枠組みを決めずに会議で議論すればいいのでは」。同じく委員の奥野信宏中京大教授は
「2人が対立しているようでは展望が開けない。政治闘争ではなく、政策の議論をしてほしい」と注文する。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120710-00000004-mai-pol