2018年9月10日 19:45 (2018年9月10日 21:25 更新) 日本経済新聞
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO35177260Q8A910C1EA2000
台風21号の直撃で関西国際空港が閉鎖して11日で1週間。一部で運航を再開したものの、旅客便数は通常の2割弱にとどまる。浸水被害を受けた第1ターミナルやA滑走路は週内をめどに一部再開を目指しているが、空港までの鉄道が再開するのは10月上旬となり、本格復旧には程遠い。
運航を再開した旅客便は格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションと春秋航空、全日本空輸、日本航空の4社で、国際線は韓国や上海などアジア圏向けが多い。10日は旅客便が72便を運航したが、17年度の1日平均約460便の2割にも届かない。
多くの航空会社が再開できない原因は浸水被害を受けた第1ターミナルの復旧の遅れにある。国土交通省近畿地方整備局は10日、関空の排水作業が終了したと発表した。浸水がようやく、ほぼ解消された。
地下の変電施設が浸水したため停電し、手荷物搬送システムなどの動作を確認中のほか、様々な設備の点検などに追われている。第1の週内めどの再開も「当初は50%稼働も難しい」(関西エアポート幹部)としており、復旧には時間がかかりそうだ。
貨物地区の再開は見通しがつかない。米フェデックスのみ8日から国際貨物便を再開。A滑走路の閉鎖に加え、関空と対岸を結ぶ連絡橋でトラック輸送が制限。関空全体の発着数の週約280便には遠く及ばない。企業も対応に追われ、シャープは電子デバイスの輸出やスマートフォンの輸入について他空港への振り替え輸送を始めた。
関空は外国人の入国者数が成田空港に次ぐ国内第2位で、西の玄関口を担う。17年度の総旅客数は2880万人と過去最高を更新。インバウンド(訪日外国人)をけん引してきた海外のLCCもほぼ運航できず、東南アジアや欧米路線もどこも、再開していない。
現在、運航数を増やす足かせは、空港へのアクセスだ。関空と市街地を結ぶ唯一の連絡橋は、タンカーの衝突で損傷を受けた部分以外の道路ではほぼ通常通り、通行が可能。だが、鉄道などの復旧まで1カ月程度かかるとみられる。
シンクタンクのアジア太平洋研究所(大阪市)によると17年のインバウンド消費の経済効果は16年比16%増の約8000億円と関西の域内総生産の1%を占める。関空が1カ月閉鎖した場合の経済損失を500億〜600億円と試算している。
今後、懸念されるのは、風評被害の拡大だ。関空から香港へと帰路に就いた外国人からは「大変な思いをしたので次行くなら東京かな」との声も漏れた。空港機能が復旧しても、すぐにインバウンドの波も回復するかは未知数だ。
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO35177260Q8A910C1EA2000
台風21号の直撃で関西国際空港が閉鎖して11日で1週間。一部で運航を再開したものの、旅客便数は通常の2割弱にとどまる。浸水被害を受けた第1ターミナルやA滑走路は週内をめどに一部再開を目指しているが、空港までの鉄道が再開するのは10月上旬となり、本格復旧には程遠い。
運航を再開した旅客便は格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーションと春秋航空、全日本空輸、日本航空の4社で、国際線は韓国や上海などアジア圏向けが多い。10日は旅客便が72便を運航したが、17年度の1日平均約460便の2割にも届かない。
多くの航空会社が再開できない原因は浸水被害を受けた第1ターミナルの復旧の遅れにある。国土交通省近畿地方整備局は10日、関空の排水作業が終了したと発表した。浸水がようやく、ほぼ解消された。
地下の変電施設が浸水したため停電し、手荷物搬送システムなどの動作を確認中のほか、様々な設備の点検などに追われている。第1の週内めどの再開も「当初は50%稼働も難しい」(関西エアポート幹部)としており、復旧には時間がかかりそうだ。
貨物地区の再開は見通しがつかない。米フェデックスのみ8日から国際貨物便を再開。A滑走路の閉鎖に加え、関空と対岸を結ぶ連絡橋でトラック輸送が制限。関空全体の発着数の週約280便には遠く及ばない。企業も対応に追われ、シャープは電子デバイスの輸出やスマートフォンの輸入について他空港への振り替え輸送を始めた。
関空は外国人の入国者数が成田空港に次ぐ国内第2位で、西の玄関口を担う。17年度の総旅客数は2880万人と過去最高を更新。インバウンド(訪日外国人)をけん引してきた海外のLCCもほぼ運航できず、東南アジアや欧米路線もどこも、再開していない。
現在、運航数を増やす足かせは、空港へのアクセスだ。関空と市街地を結ぶ唯一の連絡橋は、タンカーの衝突で損傷を受けた部分以外の道路ではほぼ通常通り、通行が可能。だが、鉄道などの復旧まで1カ月程度かかるとみられる。
シンクタンクのアジア太平洋研究所(大阪市)によると17年のインバウンド消費の経済効果は16年比16%増の約8000億円と関西の域内総生産の1%を占める。関空が1カ月閉鎖した場合の経済損失を500億〜600億円と試算している。
今後、懸念されるのは、風評被害の拡大だ。関空から香港へと帰路に就いた外国人からは「大変な思いをしたので次行くなら東京かな」との声も漏れた。空港機能が復旧しても、すぐにインバウンドの波も回復するかは未知数だ。