俺はTE本社近くのラーメン屋で、昼休みにいつものチャーシュー麺をすすってた。
カウンターの隣には、いつも見かけるTEの社員二人組。
「ああ、俺たちTEマンだぜ」と、でかい声で笑いながら話してる。
「入社試験のあの地獄を突破した瞬間、マジで天下取った気分だったよな!」
スーツのピンバッジがキラキラ光って、店員もちょっとビビってる感じ。
「TEマンって響き、最高だろ? 日本動かしてるの、俺たちだからな」
チャーシューかじりながら、まるで世界の頂点に立ったようなイキりっぷり。
「伝統ってのは俺たちが作るんだ! 先輩も言ってたぜ、電力は俺たちの誇りだって!」
もう一人が丼持ってうなずく。「電力が何してくれるかじゃねえ。俺たちが電力で何するかなんだよ!」
店内が一瞬静まり返る。すげえ、TEマンの使命感ハンパねえ。
「ご職業?」って聞かれたら「TEです」で女の子全員落ちるよな!って、ゲラゲラ笑ってる。
TEブランドの威力、合コン無双、知名度バッチリ! 並ぶ者なしの王者!
「TE入ってマジよかったわ。人生これで完璧!」
そんな声がラーメン屋に響きまくってた。

それが、311のあの日から、なんか変わった。
あのラーメン屋、いつものTE二人組が来ても、なんか静か。
「…チャーシュー麺、いつも通りで」って、ポソポソ注文。
あのイキった声、どこ行ったんだ?
「TEマン!」って叫んでたやつが、丼に顔近づけて黙々と食ってる。
「…まあ、仕事は、ほら、色々あるしな…」
相方がチラッと目合わせて、なんか気まずそうにスープ飲む。
使命感とか、伝統とか、天下とか、もう一言も出てこねえ。
店のテレビで復興のニュース流れるたび、二人とも下向いて箸止まる。
あの「TEです!」の一言でドヤってた輝き、なんか消えちまったみたい。
ラーメン屋の親父も、なんか気の毒そうにスープ注いでる。

でもさ、俺は思うんだ。
あのイキリがなくなった分、なんか二人、ちょっと人間らしくなった気がする。
TEマンじゃなくて、ただの疲れたサラリーマンに見える。
311が変えたのは、電力だけじゃなかったのかもな。