総崩れの原発輸出 原子力政策見直しを(時論公論)

日立製作所は、イギリスで進めていた原発計画について、事業継続は困難と判断し、凍結することを正式に決定。
三菱重工が手がけるトルコへの輸出も暗礁に乗り上げており、事実上すべて頓挫することに。
ただこの問題、単に輸出をやめれば済む話しではない。
輸出で技術や人材を維持する狙いがあっただけに原発の安全を保てるのか、また今後も原発に頼るのかどうか原子力政策そのものの見直しが不可欠。

民間として経済合理性がない
原発輸出の凍結の決定にあたって、日立の東原社長は何度も強調。
2国間の案件であれ、民間としてこれ以上時間と費用を浪費できないというわけ。
2基建設して2020年代前半に運転することを目指し、準備。ところが原発の安全基準が世界的に強化され、建設費が当初の1.5倍の3兆円に膨らむ見通しと。

そこで日立は中西会長がイギリスのメイ首相に直接、発電した電力の高値での買い取りを要請。
しかしイギリスでは風力発電など再生可能エネルギーの価格が急激に下がっていることもあって、原発の価格だけが上昇することへの批判も。
結局希望通りの買い取り価格や、追加の支援も困難となり凍結と判断されたわけで、撤退も視野に入る。

政府は2000年代半ばから輸出の旗を振った。
日立、三菱、東芝のメーカー3社もこれに応え、東芝がアメリカの原子炉メーカー「ウェスチングハウス」を買収するなど、動きが活発となっていたまさにその時起きたのが福島の事故。

世界的に原発への不安が高まったが、政府は「事故の教訓を生かして世界の原発の安全強化に貢献する」と理屈をつけ、輸出政策を継続。
しかし規制の強化で原発市場は一変。事故前1基あたりの建設費が5000億円だったのが1兆円以上に高騰し、計画が軒並み遅れ。
東芝はアメリカの計画の遅れで損失が拡大、撤退時期も遅れたため1兆円を超える巨額の損失で経営危機に。

ほかにもリトアニアが、日本の計画を国民投票で否決。ベトナムも日本への発注を白紙撤回。
安倍総理がエルドアン首相へのトップセールスで三菱重工が受注を決めたトルコの計画についても、事業費が膨らんで継続は困難な情勢。
日本の原発輸出は事実上すべて行き詰った。
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