不祥事続く東電「官僚的組織の弊害」 規制庁元幹部が見た縦割り体質
https://www.asahi.com/sp/articles/ASTD12FZYTD1UPQJ007M.html

東京電力柏崎刈羽原発について、新潟県の花角英世知事は再稼働の容認を表明しました。福島第一原発事故を起こした東電が再び原発を動かす「適格性」があるのかどうかはこれまでも再三問われてきました。原子力規制庁で審査チーム長を務めた長岡技術科学大の山形浩史教授に、いまも残る東電の課題を聞きました。

■質問したら「別の部署が考えること」

 東京電力に原子力発電所を動かす適格性があるのか。福島第一原発事故を起こした会社として東電が常に問われてきた課題です。

 適格性を巡っては原子力規制委員会が2017年に柏崎刈羽原発6、7号機の審査の過程で、東電に対し福島第一原発の廃炉への覚悟や、不確実・未確定な段階でもリスクに対する取り組みをすること、社内の異なる意見・知見を一元的に把握し安全性向上に反映することなど7項目を求めました。社長名の文書で回答させ、再稼働に必要な許認可のひとつとして原子炉等規制法が定める「保安規定」に反映すると約束させました。

 それでもその後に柏崎刈羽原発で、他人のIDを使った東電社員の中央制御室不正入室や、核物質防護設備の機能喪失が相次いで発覚しました。

 私は、原子力規制庁の審査担当者として東電と向き合いましたが、不祥事を繰り返す背景に、官僚的な組織の弊害が残っていることがあると感じています。

 東電はグループ全体の従業員が約3万8千人の巨大組織なので、権限を配分し、規則を定める官僚制をとらなければ回りません。ピラミッド構造で現場の意見が上層部に上がりにくい。縦割りで役割意識が強く、担当範囲外のことには無関心になりがちで、逆に範囲内のことは他部署に相談せず決めてしまう。そして横の連携も希薄になってしまう。実際、核物質防護設備の問題では、限られた担当者が都合良く状況を解釈し、上層部も把握できていませんでした。

■あいさつ運動よりもすべきこと

 福島で事故直後の混乱が続く…

この記事は有料記事です。残り1057文字
有料会員になると続きをお読みいただけます