GSOMIA破棄「米は無関心」 日韓消耗戦、打開策は
聞き手・池田伸壹 聞き手・桜井泉 聞き手・鈴木拓也 2019年8月30日22時24分

 日韓関係の悪化が止まらない。日本側がまさかと思っていた、韓国による
軍事情報包括保護協定(GSOMIA〈ジーソミア〉)破棄。
国交正常化から54年、打開策は見えず、深刻な事態だ。

冷泉彰彦さん 作家・ジャーナリスト
 1993年から米国に住み、国際情勢を観察し続けていますが、日韓の対立については、
ほとんど報道がありません。米国の3大ネットワークや報道専門テレビチャンネルでも目にしませんでした。
国際報道が比較的豊富な新聞でも「各国の地域ニュース」の延長で
解説記事を載せていた程度で、リアクションもまずありません。

 米国務省、米国防総省の専門家は韓国への懸念を表明したのかもしれませんが、
トランプ米大統領はさほど関心を払っていません。安全保障での日米韓の枠組みが
脆弱(ぜいじゃく)となった事態が露呈してしまったかもしれません。

 究極の自国第一主義のトランプ氏は、北朝鮮がいくらミサイル発射を繰り返しても、
自分の国に届かない射程の短距離ならば問題ないと明言してしまっています。
米国と日韓にとって戦略的な脅威かどうかよりも、自身と北朝鮮の
金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との個人的な関係に、自信を持っているかのようです。

 トランプ氏はもともと、安全保障よりも金銭に換算できる交渉を、それも多国間ではなく
一対一でやることが得意と思い込んでいます。ですから、日本と韓国が熱くなっているのは、
日本と韓国それぞれからより有利な条件を引き出す好機とすら、思っているかもしれません。

 今回、韓国が下したGSOMIA破棄の先に、日本政府はなんらかの出口戦略を描いているのでしょうか。
もし戦略を持たず、ただ韓国との対立をいたずらに激化させ、
米国による幕引きを期待しているなら、それは困ったものです。
トランプ氏の関心がない以上、米国の調停や圧力を期待するのは難しいからです。(続く)