>>638
こく【刻】
〘名〙
□一 きざむこと。彫りつけること。
▷ 読本・椿説弓張月(1807‐11)残
「その残篇五冊、ここに刻(コク)成て、初て全部す」 〔史記‐始皇本紀〕
□二 (「剋」とも) 旧暦における時間および時刻の単位。水時計の一種である漏刻の漏壺内の箭(や)の示す刻んだ目盛に由来する。十二支また序数の下に付いて助数詞として用いられる。
@ 一昼夜を等分に分けて示す定時法の場合。
㋑ 一昼夜を十二等分した一つ。午前零時を子の刻に置き、以下順次十二支に配するもの。「時(とき)」ともいう。
▷ 日本後紀‐延暦二四年(805)六月乙巳
「七日戌刻、第三第四両船、火信不レ応」
㋺ 一昼夜を四十八等分した一つ。十二支の各各に四刻ずつを配し、それぞれを一・二・三・四、また初・一・二・三の序数でよぶ。朝廷行事、日月食等に関して広く用いられた。「点」ともいう。〔令集解(868)〕
㋩ 一昼夜を百等分した一つ。天文、暦法上の記述に広く用いられた時法で、十二支の各々に八刻三分の一ずつを配するものと、十二支の各々を初・正に分け、その各々に四刻六分の一ずつを配するものがある。
▷ 左経記‐長元元年(1028)三月一日
「日蝕十五分三半弱、虧初寅七刻八十三分、加時卯一刻〓六分、復末卯三刻卅七分」
㋥ 一昼夜を五十等分した一つ。十二支の各々に四刻六分の一ずつを配するもの。具注暦の太陽の出入時刻の表示に見られる。
㋭ 一昼夜を九十六等分した一つ。十二支の各々を初・正に分け、その各々に四刻ずつを配するもの。江戸後期に見られる。
㋬ 一昼夜を百二十等分した一つ。十二支の各々に十刻ずつを配するもの。
A 昼と夜をそれぞれ六等分して示す不定時法の場合。昼夜の境が季節によって一定しないので、季節により昼夜により一刻の長さを異にする。
㋑ 一日を十二支に配した一つ。
▷ ロドリゲス日本大文典(1604‐08)
「昼と夜とは十二の時刻に分割される。昼が六つ、夜が六つに分けられ、その時刻を Cocu(コク)またはトキと呼ぶ」
㋺ 十二支の各々に三刻ずつを配した一つ。それぞれ上・中・下の序数でよぶ。
▷ 実隆公記‐文明一八年(1486)四月三日
「今夜丑下刻、東隣放火、猛勢襲来揚二時声一」
□三 (形動) =こく(酷)AB
▷ 文明本節用集(室町中)
「徳莫レ大レ於レ仁、禍莫レ大レ於レ刻(コク)」
[語誌]
(1)㊁の時法として古く用いられたものは@㋑㋺における定時法の「刻」で、朝廷内や暦法上では江戸中期まで行なわれた。室町期以降は不定時法、すなわちA㋑㋺の「刻」が広くみられ、江戸時代に一般にみられるものはこれである。
(2)この不定時法の「刻」は、朝の薄明の始め、夕方の薄明の終わりを、それぞれ卯・酉の真中とするか、あるいは卯・酉の始めとするかによって二様の解釈があり、この違いによって半刻の相違が生じてくる。
─
こく‐・す【刻】
〘他サ変〙 ⇒こくする(刻)
─
こく‐・する【刻】
〘他サ変〙 [文]こく・す 〘他サ変〙
@ 刃物などで石、木などに彫刻する。きざむ。彫りつける。彫りこむ。ちりばめる。
▷ 花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉一
「眉上に八字の皺を刻し」
A こまかく区切る。きざむ。
▷ 花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉四七
「分秒を刻(コク)する音(いん)は」
B 書きしるす。本にして出す。出版する。
▷ 花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉二三
「僕曾て書を刻(コク)せり」
C 苦しめる。いためつける。
─
