「原告は、本件車両が平成2年式の中古品であること、アルファロメオという「名車」でありながら、
出品価格が6万4000円と設定されており、その価格が通常の同年式同車種の価格に比べると極めて
低廉であることを十分承知していたものである。

原告は、落札後本件車両が搬送されてきて初めて、オークションサイトで指摘がされていなかった
いくつかの損傷が存在していることを発見したと主張する。

確かに、損傷の中には、ガソリンタンクからの油漏れなど車両の走行に危険を及ぼしたり支障をきたしたり
する部分もあり、被告がこのことをオークションサイトで事前に告げなかったことは相当でない。

しかし、一方で、被告は、同じサイトの中で、初心者に対し落札に際しての一定の注意を促し、
むしろ初心者については落札は控えるようにとのコメントを出しているのであるから、初めて
オークションに参加する原告としても、低廉な出品価格に照らし、前記のような瑕疵のあることは
十分予測し得たはずである。

ところで、中古自動車の売買においては、売買当時ある程度の損傷が存在するのは当然であり、
代金額も買受け後の修理費用を見込んで決定するとされている。本件の場合,本件車両の
落札価格6万4000円に原告が修理費用として請求している29万3600円を加算すると
35万7600円となるが、これは、原告が落札時に認識していた同年式のアルファロメオの価格帯
(17万円ないし68万円)のほぼ中間値に相当する価格である。すなわち、原告は、修理することを
前提として、相応する代価で同年式同車種の中古車を取得したことになる。そうすると、
本件車両の前記損傷の程度は、落札価格に照らして許容すべき範囲内のものと考えられ、
民法570条の『瑕疵』ということはできないというべきである。」


カス