投稿日: 2018年9月4日

いわゆる「ワタミ隠し」が奏功し復活を遂げつつあったワタミですが、宅食事業が危機的状況となり営業損益が拡大しています。今回の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』
では店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、競争が激化している宅食市場の現状を紹介するとともに、完全復活に向けワタミが取り組むべきことを考察しています。



ワタミの宅食事業が危機的状況。一方で鳥貴族の失速で居酒屋事業が好機か

不振の総合居酒屋「和民」を、勢いがある鶏居酒屋へ転換することで復活を遂げつつあるワタミ。しかし、ここにきてその未来に黄色信号がともっています。

8月13日発表の2018年4〜6月期の連結決算は、営業損益が2.2億円の赤字(前年同期は1.1億円の赤字)でした。赤字幅が大幅に拡大しています。

居酒屋の運営など「国内外食事業」は、好調とはいいがたいものの、ブラック企業批判などの影響で下落が続いていた売上高が近年下げ止まっているほか、収益性が改善していることもあり、
復調の兆しを見せている状況にあります。18年4〜6月期の国内外食事業売上高は113億円と前年同期からわずかに減収となったものの、不採算店の閉鎖が主な理由のため、ネガティブに捉える必要はないといえます。
また、営業損益が3,500万円の赤字だったものの、前年同期の6,700万円からは大きく縮小しています。収益性が改善しているため、同事業に関してはポジティブに捉えていいでしょう。

「ブラック企業が運営している居酒屋」というイメージが強い「和民」や「わたみん家」といった居酒屋を、から揚げが主力の居酒屋「ミライザカ」や、焼き鳥が主力の居酒屋「三代目鳥メロ」に転換し、
「ワタミ隠し」を進めたことが奏功しています。18年4〜6月期の国内外食事業の既存店売上高は、前年同期比2.1%増と好調に推移しています。

このように、国内外食事業は格別に悪いとはいえません。一方で高齢者向けの弁当宅配の「宅食事業」が不振にあえいでいます。18年4〜6月期の宅食事業売上高は前年同期比1%減の93億円でした。
営業利益は3割減って3億円となっています。減収減益となりました。1食あたりの単価が低下したほか、広告宣伝費がかさんだことが影響しました。

高齢化社会の到来で成長が見込まれていた高齢者向けの弁当宅配市場に大手企業としていち早く参入したのがワタミで、08年に食材宅配サービス「タクショク」を買収したことから始まります。
外食や自炊を面倒に思う高齢者や自宅近くにスーパーやコンビニエンスストアがないなどの「買い物難民」の高齢者を中心に支持を集め、右肩上がりで成長しました。そして、12年にブランドを刷新し、「ワタミの宅食」として再スタートを切っています。

しかし、再スタート直後につまずきます。競合他社の参入が相次いだことで競争が激化し、業績は悪化していきました。増加していた1日あたりの配食数は13年3月期(28.1万食)以降減少が続き、
18年3月期は23.3万食と5年前と比べて2割近く減りました。売上高は14年3月期(428億円)まで右肩上がりで伸びていましたが、その後は減少が続き、18年3月期は380億円と4年前と比べて1割以上減っています。

https://www.mag2.com/p/news/369576
競争が激化する宅配市場の現状
https://www.mag2.com/p/news/369576/2
https://www.mag2.com/p/news/369576/3