私たち視聴者はマイケル・J・フォックスの顔をもちろん知っています。
パーキンソン病と闘っているというニュースが報じられてから
俳優活動は以前に比べて目立たなくなりましたが、
それでもなにしろあの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の
マイケルJ・フォックスなのです。私たちは画面の左隅の
コーヒー・スタンドの脇に彼が小さく立っている
ほんの一瞬のファースト・ショットも見逃すことがありません。
しかし『グッド・ワイフ』の世界の住人ダイアンとアリシアは
ケニングを知りません。
視聴者とダイアンたちの間にあるこの情報格差も
今回のドラマを楽しむための隠し味のひとつであり、
【製薬会社が弁護士を解雇して、代わりの弁護士が
ニューヨークからやって来ることになった】という、
一見まわりくどくて必然性がないような設定が最初に必要だったのです。
この設定は以前このスタッフ・ブログでご紹介した
「チェーホフの銃」>>495 の一種だといえます。
こんな具合に『グッド・ワイフ』のストーリーは、
一分(いちぶ)の無駄もない、緻密な計算の上に組み立てられています。
まばたきする時間も惜しいほどすぐれたドラマだと言えます。
この先も、「抜け目のない(canny)」弁護士「ケニング(Canning)」は、
アリシアたちをたびたび苦しめることになります。
両者の今後の対決をぜひ楽しみにしていてください。