検察官が罪状を読み上げる声が続いている。
「被告人は残虐にも**を**し、もって被害者を**せしめたものであります。その動機は極めて利己的なものであり情状の余地はなく、死刑の求刑に相当すると判断いたします」
はあ。
彼は無感動にその声を聞いた。まあ、そう言うならそうなんだろう。だが一つだけ言っておきたいことがある。
「被告人、ただいまの起訴状について、事実と異なることはありますか」
「……あります」
彼はつぶやいた。弁護士が慌てて制止しようとしたが、構わず裁判官を見る。
「一つ。検査官は『残虐にも』と言いましたが、ハンマーで殴ろうがナイフで刺そうが、被害者が痛みを感じ、そして死に至るのは同じです。私は故意に苦痛を長引かせようとしたわけではなく、その発言の意図が理解できません。死に至らしめたという事実があるのみです」