外国人が語る日本の特別感とは A

「村上は相変わらず考え方がユニークだなぁ。でも的を得てる。
"遺伝子レベル"というよりも、"深層文化レベル"に近いかも」と大谷。

「地理が違えば歴史が違う。歴史が違えば、文化が違う。
文化が違えば、行動様式が違ってくる。それを民族性なんて言葉で
片づけるのは乱暴だけど、生きる為の手段と捉えると全てが腑に落ちる。

日本の常識は世界の非常識。世界の常識は日本の非常識とよく言われる。
なぜ常識が逆転するのか考えてみるのも面白いかもしれない」佐伯が語る。

「街中にゴミ箱がないのに街が綺麗。電車で列を整然と作る。
車が通っていなくても信号を守る歩行者の姿に驚く外国人観光客。

夜でも安全に歩ける社会。財布などの落とし物、忘れ物が中のものが
盗まれずにそのまま戻る文化に感動する外国人観光客。

約束を守り、時間に正確であり、信頼関係を重視する国民性。
挨拶や「いただきます」などの習慣に感動する外国人。

相手の気持ちを察して、自然に対応できる心がけが出来る。
おもてなしの精神が自然に根付いている。礼儀正しさ、

文化・伝統が日常に息づいている。そして四季の移ろいの美しさ
などに外国人観光客は日本の特別感を抱くのだと思う」と佐伯。

歴史学、文化人類学、社会心理学などを研究テーマにしてきた
研究仲間だけあって普段から色んな事に興味を持ち考える連中
なので聞いていると色々と勉強になる。

 酒が進むにつれ、話題はさらに広がる。

「カルダシェフ・スケール宇宙文明レベルで見たら、
争いのない社会こそが高次元なんじゃないかって思うんだよ。
そういう意味では日本は世界でも貴重な存在なんたよな。

最も残さなきゃいけないのは日本人であり文化なんだよ。
0.73の現代文明レベルを1以上にまで引き上げられるのは
この日本であり日本人の精神性だと思うね」と村上。

「確かに争いのない社会が理想だね。成熟した社会の条件だ」
湯気の立つ熱燗を呑みながら佐伯が言う。

続けて佐伯が語る。
「世界はまだ力の均衡で動いている。でも信頼を基盤にした社会が
中心になってくることが人類の可能性を示しているのかもしれない」

 窓の外には、東京駅の赤レンガと高層ビルの光が重なり、
 まるで過去と未来が同時に存在しているようだった...