因果

ある日の午後。
五歳のお兄ちゃん・ゆうたは三歳になる妹・みなみがせっかく積み上げて
完成まじかの積み木を足で蹴ってバラバラに壊してしまいました。
みなみは泣き出しました。

そこへおばあちゃんがやってきました。
「ゆうた、妹を泣かせてはいけませんよ。あなたはお兄ちゃんなんだから、
優しくしてあげなさい。人の嫌がることする子は地獄のような怖いとこへ行くよ」

ゆうたは首をかしげて、まだ納得できない様子でした。
「でもぼくはちょっと、みなみにいじわるしただけたよ。
 そんなことでじごくへいくの?」

近くでその様子を見ていたおじいちゃんが、静かに笑いながら
ゆうたの傍に座って「ゆうた、いい質問だね。天国というところはね、

みんな仲良くしているんだ。意地悪な人はいない。誰かを困らせる人も、
嫌な思いをさせる人も、嫌な思いをする人もいない。みんなが笑顔で、
安心して暮らせるところなんだよ。意地悪な人が天国に行くことはないけど、

でも、もし間違って天国に来てしまったとしても、意地悪をしたくて、
したくて、どこまで我慢できるかの我慢比べになってしまう。

そうなればその本人にとって、もはや天国とは呼べないところになる。
単なる苦痛な場所になって、我慢出来ずに、ついにやっちまうだろ。

そこで嫌な思いをさせる人と嫌な思いをする人ば生まれる。
そうなれば、そこはもはや天国ではなくなる。普段から意地悪な人は、
意地悪が当たり前になっている。そんなことは大したことではないと思っている。

けれど、人に嫌がらせをしたことがない人は"人を困らせちゃいけないよ"
と言われても何ら苦痛にはならない。だって普段から嫌がらせをしていないからね。
普段から人の嫌がることをする人はごく当たり前にやってしまう。

それは悪いことをしているという認識がないからなんだ。人の善し悪しの考えは
育ってきた環境や親のしつけ、友達関係でも随分と違ってくるんだ。
小さいころからどんなことを学んできたかが、とても重要なことなんだ」