自然に神が宿る A

宮司の家に着くと、障子越しに午後の光が差し込み、室内を柔らかく照らしていた。
囲炉裏にはまだ火は入ってはいないが窓から入る陽射しが温かさを与えている…

「夕暮れ前のこの時間が好きなんです。祈りを終え、夜を迎える前のひととき…」
 佐藤はお茶を受け取りながら微笑笑む...
「研究室では人工の光ばかりですが、こうして自然の光に包まれていると心が落ち着きます」

二人は窓へに座り、午後の光を浴びながら語り合う。
宮司は村人がこの時間帯に畑仕事を終え、家族と過ごす習慣を話す。

午後の光に包まれた宮司の家。茶を飲みながらふたりはさらに深い話へと進んでいった。

宮司は語る。「日本には古くから八百万の神がいます。
 山にも川にも、石にも風にさえ全てに神が宿るのです」

佐藤は頷きながら
「科学の言葉で言えば、それは自然の多様性の現れですね。
 無数の存在が相互に関わり合い、世界を形作っている」

宮司は続けて「人もまた神の分け御霊。つまり一人ひとりが神性のかけらを宿している」
砂糖か目を輝かせる。「それは科学で言う生命の普遍性に近い。私たちの身体を構成する
元素は星々の爆発から生まれた。人は宇宙のかけらを宿しているとも言える」

二人の言葉は重なり合い、やがてワンネスとい響きにたどり着く。宮司が
「八百万の神も、分け御霊も、結局は一つの大いなる存在に通じるのかもしれません」

「科学も神道も、同じ根源を探している。多様でありながら一つに収束する。
 それがワンネスです」と佐藤。二人の言葉が共鳴し合う。

 午後の光が障子を透かし、二人の間に柔らかな影を落とす...
「あなたの言葉は、私の研究を広げてくれます」
 二人は静かに笑い合った。

「八百万の神は、人々の心に共通する象徴の姿でもあるのです」と宮司。
「それはユングの言うし集合的無意識に近い。人類が共有する心の深層が
 神話に形を与えているのかもしれません」と語る佐藤。

二人は同じ普遍的な心の源泉を探っているという理解に至り意気投合する。