🌾も心も心を育てることの大切さを知る

俺はボーイスで主力として活躍し、県内の名門校に進んだ。将来を期待されて入った
名門校。甲子園を目指し血のにじむような努力をして頑張ったが中途退学した。

野球部に馴染めなかったのが表向きの理由だが、先輩のしごきが原因だった。
理不尽なしごきに耐えられず、先輩を殴り怪我をさせ退部した。

退学してからは、
毎日のように繁華街に出て自らの憂さ晴らしで喧嘩を売る日々だった。

ある日、いつものように繁華街で喧嘩の相手を探していると、
一人のオジさんが歩いてきた。俺はわざとぶつかり
「どこ見てるんだ!! じじぃ!」と睨みつけ威嚇した。

「若いの、威勢がいいね。俺が相手するから、来てみな」と言われ
向かっていったが、そのオジさんの威圧感に圧倒された。オジさんの目を見ると、

さっきまでのオジさんの雰囲気とは思えない鬼の眼と威圧感に体が震え冷汗が出た…
初めて喧嘩で感じた恐怖だった。ここで、くじけて弱みを見せたら男が廃ると思い、
構わず拳を振り回したが全て空振り、空を切り交わされた。

「この野郎!!!」と悔しさで叫び続けたが、オジさんの拳は確実に俺を捕らえ、
的確にヒットしボコボコにされた。初めて味わった敗戦だった...

「それかおめえの実力だ! おめえはまだちっぽけなひよっこだ!
心・技・体、そろって初めて強くなる。本当に強いものは己のことをよく知っている。

おめえはまだ若造だ。下手に威勢を張り粋がったつまらん生き方して人生を粗末にするな。
荒んだ心の憂さ晴らしはやめて真面目に生きろ。それが一番いいんだよ。
わかったか、なあ、坊主 ワハッハハ…」と頭をポンと叩いて笑って去って行った。

のちの風の噂では、その方は喧嘩空手の達人でやくざの用心棒をやっていたが
 その後のやくざ抗争に巻き込まれて亡くなったという...

 あれから俺は変わった。今はじいちゃんの畑の手伝いをしている。
 最初の頃は泥にまみれて、疲れてくたくたで投げ出したくなった時もあったげと、

 土を耕し、種をまき、芽が出て、花が咲き、黄金色の穂が揺れるのを
  見るたびうれしくなる。🌾も心も育てることの大切さを知った。