薬物療法について
抗精神病薬
統合失調症の治療の中心となる薬を「抗精神病薬」といい、症状の改善や再発の予防に大きな力を発揮します。抗精神病薬は、主として脳内で過剰に活動しているドーパミン神経の活動を抑えることで症状を改善すると考えられています。抗精神病薬は、定型抗精神病薬(従来型)と非定型抗精神病薬(新規)とに分けられます。定型抗精神病薬は陽性症状に効果があり、非定型抗精神病薬は陽性症状に加えて陰性症状や認知機能障害に対する効果も期待できます。
薬による治療に合わせて、十分に休養をとることも大切です。
家族をはじめ、周囲の人たちが協力して治療に専念できる環境を作りましょう。
その他の薬
抗精神病薬のほかに症状に合わせて、不安や抑うつを和らげる薬、睡眠薬などが使われます。また、抗精神病薬の副作用を抑えるための薬が処方される場合もあります。
症状を調整する薬

抗不安薬 強い不安感や緊張感を和らげる
抗うつ薬 憂うつな気分を和らげ、意欲を高める
睡眠薬 よく眠れない、寝付きが悪い、早朝に目が覚めてしまう、昼夜逆転など、睡眠のリズムを調整する
抗精神病薬の副作用を抑える薬
抗パーキンソン病薬 手のふるえ、身体のこわばり、足のむずむずなどの錐体外路症状を抑える
便秘薬 便通を良くする
副作用かな? と思ったら
時として体が硬くなったように感じたり、手足がふるえたり、落ち着きがなくなる人も中にはいます。また、のどが渇いたり、便秘になったりする人もいます。
これらは薬の副作用の場合がありますので、少しでも「おかしいな」と感じたら主治医に相談しましょう。薬の量を調整したり、種類や組み合わせを変えることで、副作用を抑えることが可能です。
服薬をやめてもいいですか?
薬を飲むことをやめると、再び症状が出てくることがあります。また、再発を繰り返すと症状が強くなり、治りにくくなります。薬には再発を予防する作用がありますから、薬を続けることはとても重要です。
症状が良くなったからといって、勝手に自分で薬をやめてはいけません。毎日薬を飲むのが面倒であれば、1 回の投与で2~4週間効果が続く持続性注射剤を選ぶこともできます。薬を飲むことをやめる、薬の量を減らすなどについては、主治医とよく相談して決めましょう。

5. 精神科リハビリテーションとは?
精神科リハビリテーションは、病気の症状で生じる「生活のしづらさ」を改善し、スムーズに安定した生活を送れるようにすることを目的に行います。具体的には、デイケア、作業療法、SST(生活技能訓練)、心理教育などのプログラムがあり、医療機関や地域の精神保健福祉センター、自立訓練事業所などで実施されています。
精神科リハビリテーションは医師や看護師のほか、精神保健福祉士、作業療法士、臨床心理士などの専門職が連携して行います。自分に合った無理のないリハビリテーション・スケジュールについて、これらの専門スタッフに相談してみましょう。
デイケア
医療機関で実施される外来治療の一つで、SST や心理教育、レクリエーション、軽作業、料理などのさまざまな活動を通じて対人関係能力を改善し、社会にうまく参加できるように準備するプログラムです。「症状は良くなったけれど社会に出る自信がない」「友達が欲しい」などの悩みがある場合は、デイケアに参加するとよいでしょう。定期的に通うことで規則正しい生活リズムも身につきます。保健所や精神保健福祉センターでも実施されています。

作業療法
作業療法士の指導のもと、手工芸、パソコン、体操、園芸、音楽、書道、スポーツなどの軽作業を通じて、楽しみや達成感、充実感といった感情の回復を図ります。これにより、日常生活や社会参加に必要な能力の回復・維持が期待できます。
SST(Social Skills Training : 社会生活技能訓練)
対人関係を良好に維持する方法や、病気や薬との付き合い方、ストレスへの対処法などのスキルを学ぶことで自信を回復し、生活の質を向上させるためのトレーニングです。
「体調がすぐれないことを周囲の人に伝えるにはどうしたらいい?」「薬で困っていることを主治医に説明するには…?」といった、日常生活の身近なテーマを設定してロールプレイング形式で学んだりします。再発防止にも役立ちます。

心理教育
病気の症状や原因、治療法などについて正しい知識を学ぶことで、病気に対する理解を深め、病気との付き合い方や前向きに治療に取り組む姿勢を身につけることができます。
家族を対象にした心理教育は「家族教室」と呼ばれ、病気に対する理解と本人への接し方やサポート方法などを学びます。