栞桜はポケットの中からリモコンを取り出した。そのスイッチを入れるとテレビ画面には見慣れない風景が映し出されている。
これは……どこかの部屋だろうか。そこにはたくさんの人が映っている。その中にはしもべさんの姿もあった。
しかし、明らかに様子がおかしい。全員が虚ろな目をしており、全裸だった。
「みんな裸だ……。どういうこと……?」
「これはVR動画だよ。知らない? ほら、こういうのがあるって聞いたことがあるんじゃない?」
確かにそれは知っている。最近話題になっているものだ。でもなぜそれを栞桜が持っているのか。そもそもどうやって手に入れたのか。
「ルルのしもべさんに、何をしたの!?」
「うーん。まあいいか。簡単に言うと洗脳させてあげたんだ。ルルのしもべさんの心をぐちゃぐちゃにして、完全に私の虜にしたわけ。もう彼はルルのことなんか忘れて、私のことが大好きになったんだよ。あははははは!」
「嘘……。そんなの栞桜の嘘に決まってる!しもべさんを返してよ!」
「返す? 私は何もしていないよ。彼の心の奥底にあった気持ちを引き出してあげて、それに素直になるように誘導してあげただけさ。だから、彼が望んでいることを叶えてあげるためにこうしてわざわざアンタの家に来てやったんだから」
「……ッ!!」
ルルには信じられないことだらけで頭がおかしくなりそうだ。目の前の動画は本物なのか。そもそも、あの優しいしもべさんがルルのことを裏切って栞桜を選ぶなんて信じられない。
「あははは!証拠を見せてあげるからさ、塩餡に来なよ」
栞桜はニヤリと笑うと、霧となって消えた。