「世界中が私たち(ロシア人)を嫌っている」。大学進学を目指して日本語学校に通うロシア人留学生のナターシャさん(仮名)が涙ながらに訴えた。
2週間前には、家族に迷惑がかからないようにと匿名で取材に応じ、母国ロシアのウクライナ侵攻への怒りをあらわにしていた。
「将来、何か日本人の役に立つ仕事がしたい」と夢も抱いていた。この短期間に「世界中が……」と絶望するほどに
彼女を追い詰めたものは何なのか。【大野友嘉子】

現金を手荷物に入れて来日

 ナターシャさんは、ロシアがウクライナに侵攻してから3週間ほどたった3月中旬に来日した。すでに日本や欧米諸国が経済制裁を発動していたため、
出国後は国際送金の仕送りが受け取れなくなっていた。祖母が学費にと用意してくれた5700ユーロのうち3500ユーロ(当時のレートで約45万円)と、
18万円を現金で手荷物の中に隠し、空港に向かった。

 ロシア当局は3月に1万米ドル相当を超える現金、金融商品の持ち出しを制限していた。ナターシャさんが隠し持つ現金は1万ドル相当より少ないが、
ある学生が4000ドルを持ち出そうとして逮捕されたといううわさを聞いていた。

 「これがロシアなんです。うやむやなことが多く、簡単に逮捕されてしまうんです」

 実際、出国時にナターシャさんの前に並んでいた高齢の男性が、警察らの持ち物検査を受けた。

 「警察官らは(男性の持ち物から)現金が見つかったと騒ぎ始め、高齢の男性をボコボコに殴り、どこかに連れ去りました。
荷物の中の現金のことが気になっていましたが、男性が連行されたどさくさに紛れて細かいチェックを受けずに飛行機に乗ることができました」

夢にまで見た日本

 ずっと日本に憧れていたという。

 「日本の大学で日本語と、もう1カ国語を勉強したいです。そうすれば、日本で働かせてもらえる。そして役に立てることを証明できれば、
永住させてもらえるかもしれない」。目を輝かせながら、そう言った。

 ロシア出国は家族の願いでもあった。

https://mainichi.jp/articles/20220514/k00/00m/030/265000c