さよなら、ミューズ(ミリバール山田視点)
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「あ、いたいた。おーい!インポーさーん!」
俺は猫背の小さなその中年の背中に向かって声を投げかけた。
彼はビクッと肩を震わせ、怯えた顔をこちらに向ける。
「…はい…?」
「いやーどうもどうも。ずっとインポーさんがコンカフェから出てくるの待ってたんだよね。」
俺が今日、秋葉原に来た理由が彼だ。
SNS上では毎日叩かれ、忌み嫌われている彼だが、俺にはどうも悪い人には思えない。
しかし善人というわけでも無い。
乳飲み子が何の経験をせず、人と触れ合うことも無くただただ41年間過ごしてきた、善悪の区別もつかない純粋無垢な41歳児。
そんな彼への印象を俺は持っていた。
今日は彼に会うことだけが目的じゃない。 話は前日に遡る。

? 前日の夜 新宿 某居酒屋にて ?
「明日さ、インポー君が塵ちゃんのコンカフェに行くらしいんだよ」 ロープリさんがビールを片手にニヤリと呟く。
「へー、そうなんすか」
「だからさ、明日インポー君を拉致ってセクキャバに連れてこうぜ。インポーが女の子と絡んでたじろぐ姿、見たくない?」
「いいっすよ暇なんで。(ついでにコンカフェ行きたい)」
「よし!楽しみだー!」
「わーい!(コンカフェコンカフェ!)」
こんなやり取りがあったのだ。
そう、当初の予定では「セクキャバ」に行くつもりだった。
しかしお店を探している間に

セクキャバなんか高くね?
ガールズバー?それ面白いの?
ピンサロ?いいじゃん!

こんな感じでメガ進化を遂げていた。
血気盛んな男5人が集まったんだ、こうなる事は予想していた。
しかしその選択には若干の懸念があった。
まったく女性慣れしていないインポーさんにはハードコアすぎるお店なのではないだろうか?
インポーさんのチンポーさんはあの刺激に耐えられるのか?
インポーさんの心に大きなダメージを残してしまうのでは?
秋葉原から錦糸町へ電車で移動する車中、俺は若干だがインポーさんに申し訳ない気持ちになっていた。
インポーさんの日頃のツイートを見ると、自身の貞操観念の高さを非常に強く感じる。悪く言えば潔癖症なのだと思っていた。
「こんな純粋で潔癖な彼をあんな店に連れて行って良いのだろうか…」 自責の念が襲ってくる。

だがその不安はすぐに吹き飛んだ。
ホクホク顔で入店するインポーさんを見送ったからだ。
「終わったら近くのデニーズに集まろう。皆さんご武運を祈ります。」
そう皆と約束し、俺はチンポーさんチームの3人とは別の店へ入店。
そして約40分後、サービスを受け終わった俺はデニーズへと向かう。先に入店していたインポーさんチームは既に着座していた。
「インポーさん大丈夫だったかな、トラウマになっていないかな。」 杞憂だった。
そこには菩薩の笑みを浮かべたインポーさんが居た。
それとは対照的にゲッソリ(?´ω`? )とした表情のロープリさんが隣に座っている(唯我さん似の女の子が付いたらしい)
その後の楽しくインポーさん達と感想を語りあった。アレを摘まれて剥かれただの、錦糸町に黄金バットが現れただの、
くだらない会話と食事を楽しみ、夜の九時頃解散となった
駅での別れ際、心無しかインポーさんの横顔は逞しく見えた。
今日の出来事をきっかけに彼の中で何かが変わったんだろう。 俺は確信していた。
「ああ、なんだか良い事をした気分だ。これでインポーさんも少しは自分に自信ついたかな。」
家路に付き、今日1日の出来事に満足し床についた。

と思った矢先の今朝の号泣ツイキャス配信である。
いやめちゃくちゃ後悔してるやん。なんで自ら暴露してるんですか。絶対内緒にしてって言いましたやん。
なんか悪いことをした気分になってしまった。ツイキャスコメントであんなに罵詈雑言浴びせられる人なんか初めて見た。
コメントでぶっ叩かれてるインポーさんを虚ろな目で観ながら俺は思った。
俺の行動は彼を不幸にしたのだろうか。 その答えは彼にしかわからない。