>>48
「……加藤さんみたいな女性がいればなぁ」
ふと思った事がつい口から出てしまった。
「あ?何言ってんだお前」
「す、スワセン!へ、変なこと言っちゃいました」
どうやら自分は思っていた以上に参っているらしい。先輩に向かって気味の悪い発言をしてしまうとは……。

「……女じゃなきゃダメか?」
「えっ?」
再び、沈黙。
今の加藤さんの発言、どういうことだ……?

「ったく、めんどくせえな。おいもこう。玄関の鍵開けろ」
「えっ?鍵って」
「今お前ん家の前にいんだよ。いいから開けろ」
え?うんこちゃんが俺の自宅の前に?どういうことだ。理解が全く追いつかない。
急いで玄関に走り鍵を開けた。瞬間勢いよくドアが開き、見慣れたうんこちゃんの姿。
「ひでえツラしてんなぁもこう」
「加藤さん!?なんで──」
言葉を待たずに彼は動いた。そして気がつけば俺の顔先ゼロの地点に彼の顔がある。
俺の寝不足で乾いた唇が、彼のそれに優しく包まれていた。

「──はっ!」
そこで俺は眠りから覚醒した。
一気に襲ってくる現実感が時計の針の音に乗って残酷な事実を俺に突きつける。
「そうか、俺は夢を見てたんか……」
いても立っても居られずスマホを取り出しLINEのトーク画面を開いた。
彼女との見たくもない酷いやり取りのその下、グループLINEの履歴。
そこにはこう書かれている。
『俺、結婚することになった』

『おめでとうございます!』
『マジすかめでたいっすね』
『この度は加藤さんが目出度く結婚ということで僕としても偉大な先〈略〉』
『マジか、おめ。あぅ』

各々が祝いの言葉を彼に送っている。
その中にはもちろん自分もいた。

『おめでとうございます!結婚式呼んでください!』

「……そうか、うんこちゃん結婚すんのやな」
当たり前のことを、呟く。
「ほんま、めでたいなぁ……」
おめでたい。本当に、おめでたい事だ。
俺は後輩として、祝わなければならない。
だのに、俺は──
「そうか、結婚、するんやなぁ……」

大粒の涙が頬を伝った。