「あ、加藤純一さんですか?今日はどうもよろしくお願いしますぅハハハ」
「あ、どうもー、加藤純一です始めましてよろしくお願いします」
ふてぶてとした態度のこいつは、関優太…いや、俺のライバルだ。画面越しにだが、沸々とした感情が湧き上がる。そうだ、こいつが奪った。俺からすべてを。
「あ、もこう遅れてるんで射撃場でも行きます?」
先制パンチだ。すかさず俺とあいつの絆を見せつけてやった。あいつをもこうと呼び捨てできるのは俺だけだ。相手は困惑したようにそうっすねぇと応じた。

「これで20対0ですね。まだやります?」
10分経った頃、”すべてを奪った男”は既に無言だった。俺はショットガン対決で一切手を抜かずに、この泥棒を完膚なきまでに処していた。チャットは荒れていた。そんなことは承知の上だった。
俺の配信者としての評判など、この際どうでも良かった。こいつが俺のすべてを奪ったんだ。俺が20回目のフィニッシャーを決めると、ハハハ…と苦笑する男はねっとりと口を開いた。
「まあ…ええですわ、それで気が済むんなら。あんたは負けたんや」
嘲るように笑っていた。ディスコードの入室音と共に俺のすべてが入ってきた。その明るくも優しい声は、俺を更に絶望へと追いやった。
「あ、関くんと加藤さんやってたんだ!どうすか、関くん強いっしょ!ホホホ」
「…知らねえよ」
「え、なんか加藤さん調子おかしくないすか、どどどどうしたんすか?」
その瞬間、俺は配信を切った